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市民公開講座「切らずに治す がん陽子線治療」 最新のがん治療 -陽子線治療-

おきもと・ともあき 1990年、長崎大医学部卒。2004年、広島県立広島病院放射線科医長、11年、北海道がんセンター放射線科診療部長、14年、兵庫県立粒子線医療センター副院長などを歴任し、15年から同センター院長。

講演 最先端の放射線治療~陽子線治療~
兵庫県立粒子線医療センター 沖本智昭院長 

患者の命と社会生活守る


 陽子線治療はがんの治療法のうち、放射線治療に分類される。放射線治療は従来のX線など「光子線」を使うものと、「粒子線」を使う新しいものがある。粒子線には陽子線と重粒子線の2種類がある。

 患者さんが陽子線治療を受診したい場合、主治医に「陽子線治療を受けたい」と伝える。専門医が診察し、陽子線治療の適応が認められると、治療が始まる。準備期間を含め、初診から約2週間で実際の治療が始まるのが一般的だ。

 陽子線治療は患者さんの体にフィットする固定具をはめて行う。体内のがんへ正確に狙いを定めるための措置だ。1回の治療時間は10~20分。ほとんどは照準の準備で、実際に陽子線を当てる時間は1分程度になる。体感的に粒子線が当たる感覚はないので、痛みもない。

体の負担を軽減

 現在の社会情勢では、がん治療をしながら仕事を続けるのは難しい。ある調査で、がんと診断された人の約7割が仕事を辞めている(治療後含む)。これはがん治療のための切除手術などの、体にかける負担が大きいためだと思う。がんを治すのはもちろんだが、患者さんの社会生活が治療中・治療後も成り立つようにしていく必要がある。患者さんが社会生活を維持する可能性を高めるためにも、陽子線治療など切らない治療が広がっていってほしい。

小児がんは保険適用

 陽子線治療は20歳未満の子どものがん治療で特に有効。今年4月には子どもの固形がん治療に健康保険の適用が始まった。

 またがんが再発した場合の治療においても、余分な細胞を破壊しないので対象臓器の機能低下が最小限で済む。前立腺がんにも有効で、悪性度の低いがんなら、当院のデータでは患者さんの99%は治療後5年間再発していない。切除の難しい頭頸部の悪性黒色腫でも高い治療成績を誇っている。

 一方、治療できない、不向きなものとしては転移が激しいがんが挙げられる。ほかにもピンポイントで腫瘍が特定できない、血液のがんには適応しない。また消化管の細胞が大変放射線に弱いため、消化器系のがんの治療も向かない。

 陽子線治療はどんながんでも治る夢の治療法というわけではないが、ほかの治療法では治すのが難しいがんを治療できる場合がある。なるべく多様ながんで、陽子線治療が健康保険に適用となり、多くの人が治療法として選択できるようになってほしい。

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年07月03日 更新)

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