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(5)手術後の生活への支援 おおもと病院がん看護専門看護師 森川華恵

森川華恵がん看護専門看護師

 乳がんの治療は、他のがんに比べ長期にわたります。また、治療後も定期的に経過を見ていくことや、治療しながら自分らしい日常生活を送るために、生活を支える正しい情報や知識を得ることが必要です。

 治療は入院や通院で行います。そして、がん治療は日々進歩しており、選択肢が広がっています。しかし、複数の治療を組み合わせて行うことが多く、どの治療を選べば良いか分らないと困惑しておられる場面に遭遇することもあります。さらに、家庭、職場、地域でさまざまな役割を担っている年代の患者さんが多く、家族や周りの人々への影響や不安も少なくありません。そのため、生活や仕事などとどのようにバランスを取っていくかが重要になります。

 治療では場合により、手術や薬物療法による乳房の変化や脱毛などのためにボディーイメージの変化や一時的に外見が変わってしまったり、セクシュアリティーに影響するなどということがあります。以下、手術後の生活への支援について述べます。

元の生活をめざして

 乳がんの手術療法後に、腕がこわばる、動かしにくいなどの症状がでる場合があります。手術目的で入院時、「手術後、手が上がらなくなりますか? よくそう聞くのですが…」と不安そうに患者さんから聞かれることがあります。確かに、リハビリテーションをせずそのままにしておくと、筋肉や関節がこわばってますます動かしにくくなるかもしれません。

 そうならないために、医療者は手術後のリハビリテーションやリンパ浮腫予防について説明し、術後の合併症を最小限にとどめ、患者さんが日常生活に戻れるように支援しています。それによって、術後に挙上困難を訴える患者さんに出会うことはほとんどありません。

 一方で、細心の注意を払いながら生活をしていても、リンパ浮腫や蜂窩織炎(ほうかしきえん)を起こして来院される患者さんもいらっしゃいます。これらは、手術数カ月後あるいは10年以上たってからも起こすことがあります。

 具体的には、患肢(手術をした方の上肢)の保護、創部の清潔保持やリンパ浮腫予防のための日常生活の注意点、自己マッサージの方法、リンパ浮腫を起こした時の症状や対処法についてお話しします。そして、自己検診の方法や婦人科検診(年に1回)受診の必要性についてなど、それぞれの患者さんの生活スタイルに合わせて説明しています。

 退院後の生活は、ちょっとした動作が疲れやすいなど、手術前の体調と違うこともあります。疲れを感じる時は休息をとり、家族など周囲の人の協力を得ながら、焦らず少しずつ元の生活に戻していくと良いです。

乳房の補整について

 乳がんの手術後には、乳房の形の変化がみられます。このことに関しては、補整下着やパッドの紹介を行っています。

 下着選びのポイントは締め付けすぎないことです。手術直後は、乳房や手術創をやさしく保護できるものを紹介します。元通りの下着をそのまま使えるように工夫できることも伝えたりしています。補整パッドについても、市販のパッドを紹介したり、市販のものを工夫して使用する方法、タオルハンカチなどの形を整えて補整する方法など、さまざまです。各患者さんに合わせてそれぞれの希望に沿った工夫策をともに考え、アドバイスしています。さらに当院では、希望により手作りパッドの指導を行いながら患者ケアもしています。

 最近では、再建手術を受けることも可能になっています。再建手術は、当院で行う場合と専門の病院にご紹介する場合があります。気になる方は、医療者に相談をしてみましょう。

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 おおもと病院(086―241―6888)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年07月04日 更新)

タグ: がん女性おおもと病院

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