文字 

在宅死割合、岡山県内でも地域差 求められる医療・介護の偏在解消

県南の患者宅で訪問診療する在宅医(中央)ら。「在宅死」の割合は県内でも地域差が鮮明だ

 病院ではなく、自宅で最期を迎えられるよう国が「在宅みとり」を推進する中、自宅で亡くなる人の割合に大きな地域差があることが6日、厚生労働省が公表した全市区町村別の集計で分かった。人口20万人以上の都市で8・0~22・9%と差は約3倍。人口5万人以上20万人未満の中規模自治体では5倍近い開きがあった。

 岡山県内27市町村の割合は6・9~27・8%、うち15の市だけで比べても最大2倍超の開きがあり、人口規模が異なるとはいえ、地域差は鮮明だ。「在宅死」を巡っては県民の6割以上が終末期の自宅療養を望んでいることが2014年の県調査で判明しており、行政には在宅を支える医療・介護サービスの偏在を解消する積極的な取り組みが求められる。

 15市のうち最低だったのは7・4%の高梁市。県によると、市内には診療所が36施設あるものの、訪問診療を手掛けるのは11施設、24時間対応は3施設にとどまるという。高梁医師会長の仲田永造医師(68)は「この地域は人口密度が低い上、道路事情も悪く、訪問サービスは非効率的で浸透しにくい」と打ち明ける。

 中山間地域特有のハードルを乗り越えようと、高梁医師会は情報技術(IT)に着目。市などと協力して14年10月、医師や訪問看護師、介護職らがインターネット上で患者情報を共有できる在宅支援システム「やまぼうし」の運用を始めた。「限られた医療資源を有効活用し、在宅死を希望する患者に応えたい」と仲田医師。

 一方、瀬戸内市の割合は16・0%と15市では最も高かった。在宅医療を24時間態勢で支える在宅療養支援診療所が市内に10施設あり、人口規模が同じ新見市(3施設)、備前市(同)と比べて充実していることなどが背景にあるとみられる。瀬戸内市の担当者は「医療、介護の専門職が熱心で、連携して在宅を支えてくれている」と話す。

 政令指定都市の岡山市は12・3%と、全国平均(12・8%)を下回った。同市は15年5月、全国に先駆けて総合相談窓口「地域ケア総合推進センター」を開所するなど在宅支援を積極的に進めてきたが「基幹病院や救急医療体制が充実している市の特性が影響しているのでは」(同市)と分析する。

 県全体でみると、在宅死の割合が最も高かったのは新庄村(27・8%)、最低は和気町(6・9%)で約4倍の開きがあった。ただ、岡山大大学院の土居弘幸教授(疫学・衛生学)は「人口が少ない町村を交えた単純比較は難しく、各自治体はデータを一つの指標とし、年ごとの推移から在宅医療の進展状況を推し測るべきだ」と指摘する。

 県平均は11・1%。県は17年度末までに13%に引き上げる目標を掲げており、医療推進課の則安俊昭課長は「在宅死の割合は地域の医療体制や住民意識に大きく左右される。希望する人の願いがかなうよう、各市町村の取り組みを一層支援していきたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年07月07日 更新)

タグ: 介護高齢者

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ