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はしか感染拡大「優先順位決め接種を」 寺田喜平准教授(川崎医大)に聞く

寺田喜平准教授

 岡山県内で、はしかの感染が広がり、一層の拡大が懸念されている。川崎医科大の寺田喜平准教授(小児感染)に注意点などを聞いた。


 ―学生世代のまん延が顕著だ。

 十、二十代の子どものころのワクチン接種率が70―80%と低かったことに原因がある。それに対し、現在の小学一年生以下は90―95%まで増加している。

 ―なぜ接種率が低いのか。

 はしか排除に向けた取り組みが本格化したのは二〇〇一年の流行以降。それ以前は「予防接種に行こう」との意識が薄かった。接種率が低いもう一つの理由は、MMR(はしか・おたふく・風疹混合)ワクチンにある。同ワクチンは一九八九―九三年に使用されたが、無菌性髄膜炎が発生、死者も出た。子どもへの影響を懸念し、接種を控える保護者が相次いだ。

 ―はしかは高校などにも広がりを見せている。

 県内でも、大学生はもちろん、小中高校にも広がり、今後患者が増えると考えられる。ただしピークは夏場までだろう。

 ―三十歳以上の感染例が少ないのはなぜか。

 はしかは、七八年から予防接種法で定期接種対象となった。それ以前の年代は三、四年おきに流行があり、大半が感染していた実態がある。自然流行で免疫を獲得したということだ。

 ―はしかをめぐる各国の動きはどうか。

 WHO(世界保健機関)は二〇〇〇年、「以後十年間ではしかによる死者数を九割減らそう」と提唱し、世界の国々が賛同した。わが国も一二年までにはしかの排除を掲げている。

 ―医療機関でワクチン不足がいわれている。

 確かにワクチン不足は深刻だ。抗体検査に使う検査試薬も間に合っていない。はしかは特効薬がなく、死亡するケースもある怖い病気。はしか騒動は過熱気味だが、逆に国民が病気を知り、排除につながる機会になればと期待している。

 ―ワクチン不足の中、どのように対応すればいいか。

 一回の接種では免疫がなくなる可能性があり、二回が望ましいが、今の状況では全員の二回接種は困難だ。幼児をはじめ、予防接種を受けていない人、既往歴がない人など全員が一回は打てるように優先順位を決めて取り組むべきだ。

 今回の感染拡大の教訓は―。

 大学生は教育実習や就職活動が盛んな時期と重なり、支障が出ている所もある。今回のように慌てて対応を迫られないよう、学校側は日ごろから接種歴などのチェック体制を整えていくべき。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年06月01日 更新)

タグ: 健康皮膚感染症

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