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岡山市民病院が多言語問診対応 翻訳タブレット端末を本格運用へ

多言語で問診するタブレット端末の画面

 岡山市立市民病院(北区北長瀬表町)は、外国人が安心して受診できる環境を充実させるため、翻訳アプリを入れたタブレット端末による多言語の問診システムの本格的な運用を近く始める。当面は救急外来の岡山ERに6台を配備。今月中旬から本格運用し、効果が確認できれば一般外来などにも拡大する方針だ。

 アプリは、医療系書籍を扱う大阪市の出版社が開発。ロシア、中国、ポルトガル、スペインの4カ国語に対応し、それぞれ日本語と英語にも同時翻訳される仕組み。「受付と問診」「症状を伝える」「医学辞書」の三つの機能がある。

 外国人が来院した際、看護師は対応できるタブレット端末の画面を患者に見せて対応。画面に質問が表示され、患者は国籍や既往歴、症状などについて回答を指でタッチして選ぶ仕組みだ。医師はデータに基づいて診察。医学辞書があるため、痛みなら「きりきり」「鈍い」「絞るような」など微妙な症状まで各国の言語で表せ、医師は患者の状態をより正確に把握できる。

 同病院によると、ERを訪れる外国人は月平均で10人程度。医師は全員が英語を使え、大半は通訳や言葉が通じる友人らを伴っての来院だが、英語以外の言語を使う外国人が1人で訪れた場合などは“言葉の壁”で症状が正確に伝わらなかったり、把握に時間がかかったりするケースがあるという。

 ERの桐山英樹センター長は「外国人の来院時には言語によって適切な医療ができるか不安を抱くこともあったが、ある程度は改善できるのではないか」と効果に期待する。

 市立市民病院では8月に職員対象の研修会を開いて一般外来を含めて医師や看護師らが使い方を学び、9月8日から試験的に運用している。同病院によると、同様のシステムの導入は県内医療機関で初めてとみられ、松本健五院長は「素早く、適切な診断と治療につなげることができる。岡山ERで定着すれば、外来や入院病棟にも広げたい」と話している。

 訪日外国人の急増や2020年東京五輪を踏まえ、国は外国人患者の医療体制の整備を進めている。医療通訳を置くなどしている国認定の「拠点病院」は全国28カ所。院内表示やホームページを多言語化する国事業の採択を受けた医療機関は津山中央病院など20機関ある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年09月10日 更新)

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