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(2)自己免疫疾患と皮膚病変―こんな皮疹に注意! 岡山赤十字病院皮膚科・形成外科部長 大野貴司

大野貴司皮膚科・形成外科部長

 自己免疫疾患では特異疹とよばれる疾患に特徴的な皮膚症状がみられます。今回は代表的な自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎、全身性強皮症、シェーグレン症候群の皮膚症状をイラストで紹介します。

全身性エリテマトーデス

 SLEは10~30歳代の女性に多くみられる関節症状、発熱、全身倦怠(けんたい)を伴う膠原(こうげん)病の代表的疾患です。血液検査では抗核抗体陽性、抗Sm抗体陽性など多彩な免疫異常を伴います。最も特徴的な皮膚症状は頬部紅斑(蝶=ちょう=形紅斑ともよばれます)で両頬に蝶が翅(はね)を広げたような紅斑がみられます。鼻唇溝(頬と口の間にできるハの字の溝)より上にあり、鼻背にも発疹がみられるのが特徴です=図1。かぶれと違いかゆみより勺熱(しゃくねつ)感(焼ける感じ)を伴うことが多いといわれています。手指、耳介などに凍瘡(とうそう=しもやけ)様の紅斑がみられることもあります。紅斑以外に頭頂部の脱毛(ループスヘア、前頭部の毛髪が細く、折れやすく短くなる)もSLEの皮膚症状のひとつです=図2

皮膚筋炎

 皮膚筋炎は筋肉の痛み、筋力低下に皮膚症状を伴う疾患です。特徴的な皮膚症状はヘリオトロープ疹とよばれる上眼瞼(がんけん)の紅斑、浮腫です=図3。顔面の筋力低下で悲しそうな表情になることもあります。名前の由来の花の色のように白人では赤紫色にみえますが、日本人では淡い紅色にみえます。ゴットロン徴候は両手指関節背面に一致して紅斑、丘疹をみとめます=図4。背中から両肩にはショールを羽織ったような紅斑がみられます(ショールサイン)=図5。最近注目されている皮膚筋炎の皮疹はメカニックハンド(機械工の手)と呼ばれ親指と人差し指の内側に手あれのような皮疹がみられます=図6

全身性強皮症

 全身の皮膚硬化と、逆流性食道炎、肺線維症、高血圧などの内臓病変を伴う疾患です。皮膚症状はレイノー現象(寒冷暴露などで手指が蒼白=そうはく=になり、その後紫紅色、潮紅がみられます)、手指がソーセージ様に腫脹、後爪郭(こうそうかく)部の毛細血管異常(爪の後ろに毛細血管が拡張蛇行)、爪上皮出血点などが特徴です=図7。手指は初め厚ぼったく触れますが、やがて硬化し指でつまむことができなくなります。顔面は皮膚硬化により表情の乏しい顔貌(仮面様顔貌)になります。小さな円形から楕円(だえん)形の斑状毛細血管拡張が目立つこともあります=図8

シェーグレン症候群

 涙腺や唾液腺に炎症を起こし、眼、口腔(こうくう)の乾燥症状、関節症状のほか種々の免疫異常がみられる疾患です。皮膚症状としては顔面などにドーナツ型の環状紅斑とよばれる皮疹がみられます。唾液の分泌低下により舌が赤く平らになる場合もあります=図9。目の周りに湿疹ができることもあります。

 自己免疫疾患に伴う皮疹は疾患に特徴的なものも多く、早期診断のきっかけになる場合もあり、気になる皮膚症状があれば専門医へご相談ください。

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 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 おおの・たかし 玉野高校、高知医科大学(現高知大学医学部)大学院卒。岡山大学医学部皮膚科准教授を経て、くらしき作陽大学食文化学部栄養学科教授・学科長。2015年4月より現職。日本皮膚科学会認定専門医。岡山大学医学部臨床教授。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年09月19日 更新)

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