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がん遺伝子検査し治療方法を提案 最先端診療に取り組む岡山大病院

遺伝子解析結果を基に治療方針を話し合う岡山大病院のスタッフら

 抗がん剤が効かなくなった人や、一般的な治療法がない希少がん患者に対し、遺伝子を解析する最新の検査を基に、治療方法を提案する最先端の診療に岡山大病院(岡山市北区鹿田町)が取り組んでいる。昨年末に中四国、九州で初めて開設された「抗がん剤適応遺伝子検査外来」だ。保険適用外ということもあり、これまでに検査を受けたのは10人にとどまるが、新たな治療の方向性が定まるケースが出ている。9月はがん征圧月間―。

 検査は、患者から採取したがん組織を米国の専門機関に送り、発がんのメカニズムや治療の研究が進められている遺伝子約200種類の変異を調べる。

 遺伝子の変異が見つかれば、検査機関は国内の未承認薬や臨床試験段階のものも含めた抗がん剤の中から、効果が期待できる薬を提示する。これを受けて、岡山大病院の専門医らが新たな治療方針を協議する。

 同病院では、遺伝子検査外来開設から9カ月間で10人を検査し、うち5人は頭頸部(とうけいぶ)がんや軟部肉腫などの希少がんの発症に関係した遺伝子が判明し、新たな抗がん剤の選択につながった。

 遺伝子検査外来の責任者で腫瘍センター長の田端雅弘准教授は「がんを引き起こす遺伝子を突き止めて、治療方法を選択する最先端の検査。新たな方針で治療を始めた患者の追跡調査をして効果を見極めたい」と話す。

 変異した遺伝子が分かっても、現段階で効果的な薬が存在しないことなどもあり、残る5人は新たな抗がん剤選択に至らなかった。それでも、効果の見込めない抗がん剤を回避するなど、治療方針の絞り込みにつながったという。

 ただ、保険適用外の検査は全額自己負担で、岡山大病院の検査費用は約100万円。検査する遺伝子を70種類に絞り込んだ検査でも48万円かかり、電話などで相談があっても検査に踏み切れない患者も少なくない。

 岡山大病院によると、国内で他に同様の検査を行っているのは、京都大病院、北海道大病院、国立がん研究センター中央病院(東京)など5施設のみ。

 田端准教授は「各病院の検査結果をデータベース化するなど、情報の共有化を図りながら、効果を高めていきたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年09月25日 更新)

タグ: がん岡山大学病院

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