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がん幹細胞の血管形成を解明 iPS細胞で岡山大・妹尾教授ら

妹尾昌治教授

 岡山大大学院自然科学研究科の妹尾昌治教授(生物工学)らのグループは26日、がんのもとになる「がん幹細胞」が分化し、がんの成長に必要な血管を形成していることをマウスの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った実験で突き止めたと発表した。がん組織内の血管を標的にした治療薬の開発につながる成果と期待される。

 グループは2012年、がん細胞の培養液を活用し、マウスのiPS細胞を培養する方法で「がん幹細胞」の作製に世界で初めて成功。その後、iPS細胞から異なる種類のがん幹細胞も生み出していた。

 今回はがん幹細胞に目印として赤色の蛍光タンパク質を発現させ、マウスの皮下に移植した。4週間後にがん組織を切り取り、顕微鏡で観察すると、血管状の細胞の中に赤く光る細胞があり、がん幹細胞から分化したことを確認できた。さらに、血管の内皮細胞があるタイプと、内皮細胞のない「疑似血管細胞」の2種類が存在することを発見した。グループによると、一つのがん幹細胞から、血管の内皮になる細胞(内皮前駆細胞)と疑似血管細胞が同時に作られ、それぞれが新しい血管に分化したと考えられる。

 がんは、成長に欠かせない酸素や栄養を得るため、がんの内部や周囲に新たな血管を形成することが知られていたが、がん幹細胞の関与は詳しく分かっていなかった。

 妹尾教授は「がん幹細胞そのものや、2種類の血管形成の詳細なメカニズムの解明に取り組みたい」と話している。成果はがん研究の国際科学雑誌9月号に掲載された。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年09月26日 更新)

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