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岡山県内中高でがん教育準備進む 17年度開始、外部講師確保が課題

保健体育の教員にがん教育についてアドバイスする西森助教=9月29日、岡山市

 がんの正しい知識と命の大切さを学ぶ「がん教育」が2017年度から全国の中学・高校で始まる。岡山県教委と岡山市教委は指導の手引を作成したり、教員の研修を開いたりして準備を進めている。国は、がん経験者や医師ら外部講師の活用を勧めているが、県内で確保できているのは2人だけ。大半の学校は教員による授業のみとなりそうだ。

 がん教育は、国民の2人に1人ががんにかかる実態を踏まえ、国ががん対策推進基本計画(12~16年度)に盛り込んだ。文部科学省は来年度から、がんの種類や治療法、予防につながる生活習慣、検診の重要性などについて全国の中学・高校で授業を行うよう求めている。

 国の動きを受けて、県教委は授業内容や指導のポイントをまとめた冊子と、教材となるDVDを本年度作製し、県内の全中学・高校に配るなど準備を進めている。

■2人だけ

 県教委は、14年度から文科省のモデル事業にも参加。毎年、中学、高校各2校で授業を行っている。岡山市教委も11年度にがん対策推進条例を施行したのを機に、12年度から年1、2校で取り組んできた。

 多くのモデル校が教員による1、2時間の授業に加え、岡山大病院血液・腫瘍内科の西森久和助教や急性骨髄性白血病を乗り越えた山邊裕子さん(65)=岡山市=に1時間の講演を依頼し、現場の視点を盛り込んだ。

 ただ、現段階で外部講師はこの2人だけ。本格スタートまで半年を切ったが、来年度から各校に派遣できる人員確保のめどは立っていない。

 「がんで家族を亡くした生徒への配慮などが求められ、誰でも講師が務まるわけではなく、人選に手間取った」と県教委保健体育課は説明し、来年度は教員による1時間だけの授業を行うよう各校に通知する方針だ。

 その一方で、文科省が「医師会などの協力を得て外部講師の確保を」としていることを踏まえ、今後は県内のがん診療の基幹病院などに講師派遣の協力を求めていくという。

■不安抱く現場

 「命の大切さを教えることは素晴らしいこと。一生懸命に聴いてくれる生徒たちが、私の励みになった。初めての試みでプレッシャーもあるでしょうが、積極的に取り組んでください」

 岡山市教委が中学校の保健体育教員約40人を対象に、9月29日に開いたがん教育の研修会で、西森助教が呼び掛けた。

 昨年1月に、西森助教らが県内の養護教諭430人を対象に行ったアンケートでは「がん教育を推進する上で妨げとなるもの・必要なもの」として、「知識・技量の不足」との回答が32・8%で最多。現場は不安も抱えている。

 岡山大大学院教育学研究科の棟方百熊准教授(健康教育)は「がん教育は緒に就いたばかりであり、各教委は外部講師が増えるよう努めるとともに、教員研修にも力を入れるべきだ」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年10月16日 更新)

タグ: がん医療・話題

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