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(4)関節リウマチと腎臓病 岡山赤十字病院腎臓内科部長 蒲生直幸

蒲生直幸腎臓内科部長

 腎臓病は一般の方にはなじみの薄い病気です。ただ、腎臓の働きが10%以下になると老廃物が体内にたまります。そのような状況になって初めていろいろな臨床症状がでてきます。それまではほとんど症状がありませんので沈黙の臓器とも言われています。

 腎臓が障害を受けると本来尿中に漏れないはずの血液中の成分が尿に漏れたり、血液の浄化を適切に行うことができなくなり、老廃物や体液が蓄積したりすることがあります。そのような状態を把握し治療をしていく上で、新たな慢性腎臓病(以下CKD)という概念が導入されてきました。

 具体的には、CKDとは、腎臓の働き(GFR)が健常人の60%以下に低下(GFRが60ミリリットル/分/1・73m2未満)、あるいは蛋白(たんぱく)尿が出るといった腎臓の異常が続く状態を表すもので、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、メタボリックシンドローム、腎臓病、腎臓病の家族歴などが危険因子と考えられています。

 また、近年腎機能低下と心筋梗塞や脳卒中などの脳心血管疾患との間には密接な関わりがあることが明らかとなり、腎臓を守ることは、心臓や脳を保護することにつながると考えられるようになりました。

 同様に、関節リウマチ(以下RA)等膠原(こうげん)病と腎臓病との関係も明らかとなっています。今回は、RAに関する腎障害についてお話します。

 RAによる腎障害の原因として、次の3つに分けられます。(1)RA疾患活動性による慢性炎症で発症する腎障害(2)RA治療薬による腎障害(3)RA患者の加齢や併存する高血圧・糖尿病・高脂血症・高尿酸血症などの生活習慣病による腎障害です。

 (1)の代表的病気はアミロイドーシスです。消化管や腎臓などの臓器にアミロイドという異常蛋白が沈着して、臓器の機能低下や障害を起こす病気です。RAでは病気の勢いに比例してSAAという炎症反応物質が血液中に作られます。このSAAという蛋白質がアミロイドーシスの原因となる物質です。血液尿検査等で早期診断、RAのコントロールをしっかり行うことが重要です。

 (2)に関して、RAの治療において、薬は効果だけあり、副作用がないのが理想です。しかし、残念ながら、人それぞれの体質の違いなどにより、副作用の出やすい人、まったく出ない人がいます。薬を飲まないにこしたことはないのですが、残念ながら病気が進行してしまいます(RAでは、痛みとともに骨破壊・変形が進みます)。それに対応するためには自分の飲んでいる薬について効果・副作用を理解しておくこと、定期的受診が大事です。

 (3)に関して、腎臓病の治療の目標は、末期腎不全への進行を遅らせることと、心血管イベントを予防することにあります。そのためには、RAに合併している高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、きちんと治療をしておくことが大切です。RAの治療も生物学的製剤の登場により大きく進歩したとはいえ、まだまだ治療にはさまざまな薬剤を必要とします。投与された薬剤の排出路として腎臓は非常に重要な臓器です。腎臓を守ることはRAの治療を続けるうえでも重要です。

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 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 がもう・なおゆき 岡山朝日高校、愛媛大学医学部、厚生省を経て愛媛県立中央病院、住友別子病院を経て2014年4月より現職。岡山大学臨床教授。日本内科学会総合専門医・指導医、日本リウマチ学会専門医、日本腎臓学会専門医・指導医、日本透析学医学会専門医・指導医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年10月17日 更新)

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