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「がん電話相談」活動20年で幕 1400件対応「役割終えた」

最後の基礎講座で、がん治療を支えた体験を語る患者の家族(左端)ら

 がん治療を巡る患者や家族の相談に電話で応じるボランティア団体「がんの悩み電話相談室おかやま」が本年度で20年余りの活動に幕を下ろす。これまでに1400件以上に対応したが、がん診療の拠点病院などに窓口ができ、相談室への相談は減ったためだ。メンバーは「一つの役割を終えた。病院や患者会にバトンタッチしたい」と前向きにとらえている。23日に20周年記念講座を岡山市内で開く。

 相談室は1996年9月、医師や保健師らの呼び掛けで発足。看護師、薬剤師ら医療の専門家に加え、研修を受けた市民が週1回、相談に応じてきた。

 相談はピークの2003年度、治療内容や主治医との関係、日常生活の過ごし方など140件に上ったが、昨年度は28件までに減った。背景には、07年にがん対策基本法が施行され、患者の支援体制が整ってきたことがあるという。

 岡山県内でも、県がん診療連携拠点病院に指定された岡山大病院と、地域拠点病院の岡山済生会総合、岡山赤十字、倉敷中央、津山中央、川崎医科大付属病院、岡山医療センターの計7施設がそれぞれ相談支援センターを設け、相談に応じている。患者会が開くサロンなど患者や家族同士で語り合う場も増えた。

 相談室が活動のもう一つの柱にしたのは、相談員研修の基礎講座を兼ねた「がんと緩和ケアを学ぶ会おかやま」の開催。一般の受講者も募り、岡山市内で年6回、医師らの講演や患者、家族の体験を聞く会を重ねた。だが、拠点病院などによる講座が増えたこともあり、本年度の受講者は32人と、最も多かった03年度の5分の1ほどに減った。

 ただ、支援体制は整っても「患者や家族の不安の大きさは以前と変わらない。話をよく聞くことは大切」と、開設当初から相談員を務める保健師の皿海二子さん(66)は言う。

 9月下旬にあった最後の基礎講座で体験を語った患者も「病院の支援センターで悩みを話すうちに病気と向き合う決心がついた。聞いてくれる場があることは大きい」と指摘した。

 同相談室長で医師の田中紀章・岡山大名誉教授は「医療の進歩で患者の生存率が高まり、相談の必要性はむしろ増している。これまでの経験をサロンなど次の活動で生かしてほしい」とメンバーの活躍に期待している。

 電話相談は毎週土曜日午後2時~5時、086―264―7033で応じている。

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 23日に20周年記念講座

 がんの悩み電話相談室おかやまの「20周年記念講座&コンサート」が23日午後1時半から岡山市北区石関町、県総合福祉会館で開かれる。

 「緩和ケアの未来」をテーマに、田端雅弘・岡山大病院腫瘍センター長や岡山市内の訪問看護ステーション管理者、病院の医療ソーシャルワーカー、患者会代表が意見を交換する。松江市在住のシンガー・ソングライター浜田真理子さんのコンサートもある。

 参加無料。申し込みはgantele1996@gmail.com。定員(300人)に余裕があれば当日参加も受け付ける。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年10月18日 更新)

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