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松岡良明賞、赤在義浩氏に聞く 大腸がん手術の第一人者

赤在義浩氏

 大腸がん手術の第一人者として多くの患者を救ってきた岡山済生会総合病院(岡山市北区国体町)統括部長・消化器外科部長の赤在義浩氏が、がん撲滅に貢献した個人、団体を顕彰する山陽新聞社会事業団の第21回「松岡良明賞」を受賞した。「生涯外科医であり続けたい」と情熱を燃やす赤在氏は、「しっかりとした治療計画を立てれば、困難な症例にも立ち向かえる」とメスを手にする思いを口にした。

 ―大腸がんの患者数は増加傾向にあり、罹患(りかん)するのは年間約14万人と推計されている。医療技術の進歩に伴い、治療方針も変わってきているのか。

 「2000年ごろを境に変化があったように思う。根治を目指し、切除を重視していた時代から、化学療法や放射線治療を併用しながら手術するなど、患者一人一人に適した治療を選択する時代になっている」

 ―治療の際には何を最優先させるのか。

 「再発させない治療だ。研修医時代の上司に『大腸がんは素直な病気。その性質をよく勉強すれば、いい治療が行える』と言われた。心掛けているのは、医師と患者の双方が病気をよく理解した上で治療計画を立てること。1度の手術で難しいと判断すれば、抗がん剤や放射線治療を併用しながら数回に分けて手術することもある」

 ―1993年に岡山済生会総合病院へ赴任後、2千例を超える手術を行ってきた。

 「赴任して取り掛かったのは、過去23年分のカルテと病理解剖の記録に全て目を通すこと。医学的知識を得ただけでなく、看護記録に残された患者や家族の思いにも触れられ、貴重な経験となった。さらに自分自身が行った手術と照らし合わせることで、カルテの分析は実感に変わった。自分のやるべきことが決まったように思う」

 ―大腸がんの中でも難易度が高いとされる直腸がんの手術を多く手掛けている。

 「直腸は骨盤の深いところに位置し、前立腺やぼうこうといった臓器のほか神経も多くあり、それらを傷つけない手術は技術力が求められる。難しい手術とよく言われるが、私自身は『少し時間のかかる手術』としか考えていない。手術する上で性機能などを温存できれば、生活の質は格段に向上するが、一方で機能温存ばかりに目を向けないことも大切だ。術後の生活を考えると、人工肛門にした方が良いケースもあり、患者の生活スタイルや年齢などを考慮し、じっくりと話し合っている」

 ―今後の抱負は。

 「外科医としてこつこつと活動しながら、予防教育にも取り組みたい。大腸がんの要因としては食事の欧米化や喫煙、運動不足などが指摘される。病気にならないための正しい知識を若い頃から身に付けることが大切。子育て世代の母親や中学、高校生らを対象にした講演活動を通じて、そのお手伝いをしていきたいと思っている」

 あかざい・よしひろ 1983年岡山大医学部卒。同大第1外科入局後、研修医として岡山済生会総合病院へ赴任。医局での研究生活を経て府中市の民間病院に2年間勤務した後、93年再び岡山済生会総合病院へ。主任医長、診療部長を歴任し2011年から消化器外科部長、14年から現職。岡山大医学部臨床教授。日本外科学会専門医。岡山市北区幸町。60歳。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年10月21日 更新)

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