文字 

くも膜下出血後の血管収縮解明 岡山大グループ 独自治療剤で改善

西堀正洋教授(左)と伊達勲教授

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の西堀正洋教授(薬理学)、伊達勲教授(脳神経外科学)らのグループは、くも膜下出血後に生じ、重い後遺症の原因にもなる脳の血管収縮のメカニズムをラットの実験で解明し、独自開発していた脳梗塞の治療剤が症状を劇的に改善させることを突き止めた。新たな治療法の開発につながる成果と期待され、24日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに論文を発表した。

 くも膜下出血は主に脳動脈瘤(りゅう)(こぶ)が破裂して起き、発症者は年間約3万6千人との報告がある。4割ほどは発症から1週間~10日をピークに血管が収縮して狭くなる症状が出る。そのうち約2割では死亡したり、体のまひなど重篤な後遺症が出たりするとされる。

 グループは、体内の多様な炎症に関わるタンパク質で、長年研究している「HMGB1」と、くも膜下出血後の血管収縮との関係を分析。くも膜下出血を発症させたラットの実験で、血管壁の細胞からHMGB1が放出され、血管の収縮と炎症を促している仕組みを解き明かした。HMGB1の働きを抑える抗体を投与すると、血管収縮などに関連する遺伝子の発現が抑えられた。

 この抗体は脳梗塞の治療や動脈硬化の予防に有効なことも確認している。西堀教授は「脳血管障害を中心に、汎用(はんよう)性の高い治療薬として活用できる可能性がある。ヒトへの投与に向けて研究を進めたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年11月24日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ