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老いの滋味をエッセーに 岡山の精神科医・下山さん出版

「老いの昆布味」を出版した下山さん

 認知症のお年寄りらを診療する精神科医、下山敦士さん(75)=岡山市=が、自らも直面する老いの受け止め方などについて記した「老いの昆布味(こぶみ)~救い~」を出版した。「人生は思い通りにならないことが多いが、その中でも救いが訪れることを伝えたい」と話している。

 下山さんは2005年まで32年間、岡山労災病院に勤務し、今は岡山、総社市の診療所、介護施設などで診療している。その傍ら、エッセーなどを執筆し、本紙くらし面でも09年に「老いて幸せ」を連載した。

 4冊目となる著書で紹介しているのは、介護施設などで出会ったお年寄りらの姿。例えば、ある男性は若い頃は教師、退職後は僧侶として地元で尊敬されたが、認知症を患い施設に入居してから昼夜構わず大声で人を呼び続け、職員を困らせていた。

 しかし、外泊で自宅に帰った際、けさをまとい、多くの人と一緒に読経することができたところ、施設でも本来の穏やかな姿に戻り、大声は消えた。「自分の役割を果たすことができ家族に認められ、心の落ち着き場所を見つけられたのでしょうか」。下山さんは想像している。

 こうした高齢者の胸中に思いを巡らせ、家族や介護職員に助言したエッセー、講演の記録などをまとめた。ユニークな書名は松尾芭蕉の紀行文「笈(おい)の小文」をもじったもので、下山さんは「老いとは昆布のようなもの。適切な調理により滋味にあふれてくる」と語る。調理に欠かせないという笑いについて分析した一文や自作の句も収めた。

 A5判、298ページ。2160円。丸善岡山シンフォニービル店(岡山市北区表町)出版サービスセンター刊。同店で販売している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年11月29日 更新)

タグ: 介護高齢者

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