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ピロリ菌除去 胃がん予防効果確認 広島市民病院 水野主任部長 リスク3分の1

水野元夫主任部長

 広島市民病院(広島市中区)の水野元夫・内視鏡科主任部長は、日本人の二人に一人が胃の中に持つとされる細菌「ヘリコバクター・ピロリ」を薬で除去すると、胃がんのリスクが大幅に下がることを突き止めた。胃がんの危険因子の一つとされてきたが、除菌治療に胃がん予防効果があることを示したのは初めて。三十日、岡山市で開かれる日本ヘリコバクター学会で発表する。

 ピロリ菌は、自ら作り出すアンモニアなどの毒素がヒトの胃の粘膜を傷つけ、胃・十二指腸かいようを引き起こす。

 水野主任部長は岡山大医学部にいた当時の一九九五年から、福山市内の病院に通う胃・十二指腸かいよう患者千百二十人を対象に、抗生剤などで除菌治療をした後の状態を最長八年七カ月(平均三年五カ月)にわたって診察。一年ごとに内視鏡検査で、がんの発生状況を調べた。

 その結果、胃がんを発症したのは、除菌治療に成功したグループ(九百四十四人)で八人、除菌に失敗したグループ(百七十六人)で四人。平均の胃がん発生率は除菌成功群が0・24%で、失敗群の0・76%に比べ、リスクは三分の一に抑えられた。

 また、ピロリ菌の感染がまだ広がっていない十二指腸かいようの時点で除菌に成功した人(三百五十二人)で胃がんに進行した人はおらず、早い段階で除菌すればより効果が高いことも分かった。

 成果は米国消化器病学会誌に掲載した。

 水野主任部長は「ピロリ菌感染者が胃がんになる確率が高いことを示し、除菌治療によるがん予防の有効性を実証できた。ただ、除菌しても完全に防げるわけではないので、定期検査も大切にしてほしい」と話している。


年5万人の死亡者減らす可能性示す

 菅野健太郎自治医科大教授(消化器内科学)の話 年五万人以上といわれる胃がんによる死亡者を大幅に減らすことができる可能性を示すもので、画期的な研究成果だ。除菌治療がいかに重要か、訴えていく必要がある。


ズーム

 ヘリコバクター・ピロリ菌 1983年にオーストラリアの研究者が発見。大きさ約3ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)で、胃粘膜の表層にだけ生息する。日本人は年齢が上がるにつれ感染率が高くなり、50代以上では約8割が感染しているといわれる。抗生剤などによる除菌治療は2000年に保険適用になった。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年06月30日 更新)

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