文字 

マラリア新薬 実験成功 岡山大大学院・綿矢教授グループ 効率的治療へ期待

綿矢有佑教授

 岡山大大学院の綿矢有佑教授(薬学)らの研究グループは二十日までに、新しいマラリア治療薬のマウス実験に成功した。現在使われている薬と比べて完治までの日数が短くて済むなど、実用化されれば効率的な治療が期待できるという。

 蚊を媒介に寄生虫が血液中に入り発症するマラリアはアフリカなどの熱帯地方で多く発症し、年間死者は世界で二百七十万―百五十万人。患者に錠剤などを与えて治療するが、寄生虫に薬の耐性ができ効果が薄くなるため、新薬を継続的に開発する必要があるとされる。

 研究グループは炭素や酸素などで、既存薬アルテミシンの化学構造に類似した新化合物「N251」を製造。この粉末をマラリアの寄生虫を持つ実験マウスに与えると、開始三日目で寄生虫は血液中から消滅し、約二カ月間、寄生虫は確認されなかったという。

 アルテミシンを投与した実験マウスではN251の場合と同じく三日目にいったん消えたが、数日後に寄生虫が見つかり、再発の懸念が出た。

 一般的にヒトでの治療では、一種類の薬だけでは寄生虫を完全に消滅できない恐れがあり、別の薬の投与を続ける。このため完治には一週間程度掛かるという。

 綿矢教授は「開発中の新薬は、他の薬を必要とせず治療日数の短縮が期待でき、副作用の恐れも少ない。二年後には臨床試験を始めたい」と話している。


国際貢献になる

 マラリアに詳しい愛媛大大学院の鳥居本美教授(寄生病原体学)の話 薬の新規開発が絶えず求められる中での有意義な研究。日本国内でのマラリア患者は皆無だが、実用化されれば医療面での国際貢献につながるだろう。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年09月21日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ