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基幹病院と診療所間で情報共有 「晴れやかネット」機能強化

晴れやかネットの拡張機能「ケアキャビネット」の画面を見る病院スタッフ=井原市民病院

 岡山県、県医師会、県病院協会でつくる「医療ネットワーク岡山協議会」は、基幹病院の医療情報を診療所などが閲覧できる「晴れやかネット」の機能強化を図っている。超高齢社会を見据え、地域で患者を支えようと、患者情報に接することができる医療職を拡大し、多職種連携を進めるほか、病院と診療所間の双方向の情報共有も計画している。

 晴れやかネットは2013年に運用を始めた。情報を提供する側の病院が、患者の同意を得て診療・看護記録、各種の検査結果、CT検査画像などを開示し、閲覧を希望する診療所や薬局などがポータルサーバーにアクセスして情報を得る仕組み。「切れ目のない診療ができる」「お薬手帳に記載がない内容を薬剤師が確認できる」など、好評だという。

 全県規模でネットワークが構築・運用され、16年11月末現在、病院、診療所、薬局、介護老人保健施設など426施設が参加し、施設数は全国トップクラスを誇る。

 従来は、1医療機関で情報を閲覧できるのは1人だけで、閲覧権限も医師、歯科医師、薬剤師に限られていた。しかし医療現場では多くの専門職が患者に関わっていることから、16年7月からは看護師や保健師、介護福祉士など、守秘義務を伴う国家資格である19職種に閲覧権限を拡大し、その病院で権限がある人全員が、職務に必要な項目を見られるように変更した。

 また14年3月には「晴れやかネット」をベースにした情報共有ツール「ケアキャビネット」の運用を開始。同意を得た在宅患者ら一人一人の専用掲示板を設け、それぞれ支援する医療・介護の多職種連携チームが、パソコンやスマートフォンで患者の症状などを書き込み、情報を共有している。高梁市、総社市、井笠地域、岡山市中心部のエリアで約250施設が利用している。

 晴れやかネットの制度設計に深く関わる合地明・医療ネットワーク岡山協議会理事(井原市民病院院長)は「近年は、手術前後の周術期のケアはかかりつけ医、手術は大病院という機能分化が進んでいる。晴れやかネット全体で双方向のやりとりができるようになることが理想」と話す。17年4月からは、一部の病院と診療所間で、双方向の情報共有を始めることも計画されている。

 ただこれまでの患者の同意件数は累計1万2166件(13年1月~16年11月末)で、同様のシステムをもつ長崎県(あじさいネット)の患者同意数(約6万人)などと比べると、十分ではない。合地理事は「高度な個人情報を取り扱うため、患者同意を得るのが大変という声は常にある。患者さんにとってメリットがあることを、医療側が積極的に伝えていく必要がある」と話している。

 晴れやかネットに関する問い合わせは、医療ネットワーク岡山協議会(岡山市北区駅元町、086―259―2077)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年01月16日 更新)

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