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(5)認知症対応力アップで地域とつながる 万成病院看護課長 石丸信一

万成病院が毎月1回開いている「地域交流カフェこだま」。30人ほどが集い、お茶を飲みながら談笑している=2016年11月19日、谷万成公会堂

石丸信一看護課長 

 「いらっしゃいませ、お飲み物は何にしましょうか?」

 土曜日の午後、谷万成公会堂に地域の方々が訪れ、出迎えた医師、看護師たちが気さくに声をかけている。毎月1回、当院が開催している「地域交流カフェこだま」の光景です。

 わが国は、現在、経験したことのない高齢化社会を迎えています。2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、認知症の人の急増も予測され、さまざまな課題が指摘されています。当院は、取り組みを強化するため15年から「認知症プロジェクト」を立ち上げ、さまざまな職種が共同し、院内外で活動しています。

 プロジェクトでは「認知症対応力アップで地域とつながる」をキーワードに、四つの取り組みを柱にしています。

 (1)院内認知症対応力向上研修

 院内スタッフに対して精神科医師による認知症概論・各論の講義、倫理的問題、事例の検討などの研修を毎月実施しています。

 (2)一般向け認知症予防・認知症講座

 地域公開セミナー「認知症サポーター養成講座」の開催や、ふれあいセンター主催の家庭介護講座の講師を担当し、一般の方への啓発に協力しています。

 (3)保健・医療・福祉、介護など関連機関との連携

 北区北地域包括支援センターや御津医師会(津高・一宮ネットコア会議)など、地域での連携強化に努めています。

 (4)地域とのつながり

 そして四つ目が冒頭に紹介しました「地域交流カフェこだま」です。

 病院には医師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士などさまざまな専門職がいるのに病気にならないと関わることがほとんどないのが現状です。「地域へ出て住民の声を聴いてみよう!」を合言葉に始めた認知症プロジェクトと地域交流カフェが目指すものは三つあります。

 一つは「専門職とのゆるやかな出会いの場の提供」です。物忘れがあり、ちょっと心配、認知症かもしれない、という時期の人は病院受診をためらいがちになる傾向があります。家族も、受診させることに労力をつかうことが多くあります。認知症になってからの相談、受診ではなく、日常の中で地域住民と、医療・介護の専門職が顔見知りとなり、関係が築けるような体制作りを目指しています。

 次に「健康管理としての認知症への意識を高める」。これまで地域住民が主体となって実践している活動(公民館活動、老人会)と連携し、認知症に特化した取り組みではなく、認知症もほかの慢性疾患と同様に、予防と早期発見が大切であるという意識を住民一人一人が持てるような場の提供を行います。

 最後に「地域ニーズを引き出し、住民で必要な資源をつくりだす一歩として何かできないか」。すべての住民が地域包括ケアシステムに関わって、相互に支えあう(互助)ことが求められる時代です。その基盤づくりの一助となれるような活動を進めます。

 精神科医師、看護師、作業療法士、管理栄養士、精神保健福祉士などが運営スタッフとして参加し、専門職によるミニ講座や健康チェック、健康体操などを行い、身心の健康に対して気軽に相談できる関係づくりを目指しています。

     ◇

 万成病院(086―252―2261)

 いしまる・しんいち 高校卒業後、1989年に万成病院入り。勤務の傍ら、岡山看護専門学校に学び、94年に卒業。2003年から現職。介護支援専門員、認知症キャラバンメイト。兵庫県出身。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年01月16日 更新)

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