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関心高まる先端巨大症 岡山大病院内分泌センター 大塚助教に聞く

大塚文男助教

 成長ホルモンの過剰な分泌は、脳の下垂体にできる良性の腫瘍(しゅよう)が影響する。骨の成長が止まった成人に起こると先端巨大症、成長期に発症すれば身長が異常に高くなる下垂体性巨人症になる。

 先端巨大症を発症するのは一年間で人口百万人当たり三、四人とされる。岡山大病院で、この病気と診断されるのは年に数人。四十~五十代が多く、男女差はない。岡山県内のほか、香川、兵庫県などの約六十人が治療を続けている。

 手足や顔つきの変化が特徴的な症状に挙げられるが、「初期は目立たず、ゆっくり進むため本人は気づきにくい。糖尿病や高血圧で受診したのをきっかけに見つかることもある」と大塚助教。診察では運転免許証などの古い顔写真との比較や、靴や指輪のサイズに変化がないかを尋ねる。

 初期症状はこのほか、歯並びの変化、舌が大きくなる影響によるいびき、手の指のしびれなど。腫瘍が神経を圧迫すると、頭痛や視力の低下も起こる。

 先端巨大症の初期症状が疑われる場合は、血液検査を実施。成長ホルモンと、その働きを仲介する物質・IGF―1(アイジーエフワン)の値が高ければ、MRI(磁気共鳴画像装置)で腫瘍の有無を確認する。

 治療は手術が第一選択肢。鼻から内視鏡と手術器具を入れ、脳の下部にある下垂体まで進め、腫瘍を切除する。しかし、下垂体は小指の先ほどの小さな器官。腫瘍が大きかったり、できた位置によっては近くの視神経や血管を傷つける恐れがあり、完全に取り除くのは難しいという。

 腫瘍が残ると成長ホルモンが出続けるため、薬で抑える。飲み薬のほか、腫瘍を縮小する注射薬もある。月に一回病院で注射するか、毎日自己注射する。「飲み薬に比べ注射薬の方が効果は高い」(大塚助教)が、費用は三割の自己負担分でも月七万円近くに上る。薬で効果がみられないときは、放射線治療を行うこともある。

 合併症の糖尿病などが進むと心臓病、脳卒中のもとになり、大腸がんなど悪性腫瘍の恐れも高まる。

 大塚助教は「早期発見に努め、合併症を防ぐのが先端巨大症治療のポイント。ただ、初期症状は多岐にわたり、原因が分かりにくいため、これまでの患者は発症から診断がつくまで平均九年もかかっている。医師の認識を高めるのも大切だ」と指摘している。

 成長ホルモンが過剰に分泌され、手足や鼻、唇、額、あごなどが肥大する先端巨大症(アクロメガリー)。発病初期は分かりにくいが、放っておけば糖尿病や高血圧などの合併症も招く。まれな病気だが、全国組織の患者会ができるなど近年、関心が高まっている。岡山大病院(岡山市鹿田町)内分泌センターの大塚文男助教(腎・免疫・内分泌代謝内科学)に、初期症状や治療法などを解説してもらう。



先端巨大症のサイン

額や目の上、下あごが飛び出してきた

鼻が大きくなった

唇が厚くなった

手足が大きくなり指輪、靴が入らない

手の指先がしびれる

かみ合わせ、歯並びが悪くなった

舌が大きくなり、声がこもる

いびきが大きくなった

頭痛がする

視力が下がった

汗をかきやすい

生理が不規則

血糖値、血圧が高い

 (大塚助教による)


メ モ

 下垂体患者の会(下垂会) 先端巨大症など下垂体関連の希少な病気を対象にした患者会。昨年6月、活動をスタートした。会員は全国に約120人。「下垂体ネット」のホームページを運営するほか、東京や大阪、京都で専門医を講師に招いた講演会や、患者同士で体験を語る会合を開いている。問い合わせは事務局(042―389―4771)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年09月29日 更新)

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