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鶏卵から感染症予防薬 岡山大教授ら手法開発 水で服用、実用化急ぐ

予防薬製造から服用までのイメージ図

小熊恵二教授

 岡山大大学院の小熊恵二教授(病原細菌学)らのグループは、ニワトリに感染症の原因となる毒素の一部や死んだ菌を注射し、産んだ卵から発症を抑える薬をつくる手法を開発、動物実験で効果を確認した。乳酸飲料や水に混ぜて服用することで予防薬として使えることが期待される。東南アジアでの使用を想定し、近くインドネシアやタイの大学とヒトでの効果を確かめる研究を始める。

 大津波後の感染症で多くの犠牲者を出した二〇〇四年十二月のスマトラ沖地震を教訓に、小熊教授が提唱する感染症予防プロジェクト「津波対策」の一環。岐阜薬科大(岐阜市)、動物用ワクチン製造販売のゲン・コーポレーション(同)と共同開発し、二十八日の「日本家禽(かきん)学会」(岡山市)で発表した。

 ニワトリに腸管出血性大腸菌O157の毒素の一部や死滅したウイルスを注入。体の免疫反応により、産んだ卵の黄身にできた抗体を特殊な方法で抽出し、凍結乾燥させた。

 実験はO157に感染させたマウスを二グループに分け実施。粉末状の抗体を水に混ぜて飲ませたグループと、水だけを飲ませたグループで観察した結果、水だけの方はO157を発症し約一週間で死んだが、抗体を含む水を飲んだグループは発症しなかった。抗体が体内で毒素を中和したとみられる。

 今回の手法でO157に加え、コレラ菌やコレラ毒素などの感染症の抗体を含む予防薬も製造可能といい、小熊教授は「注射器も必要なくどこでも簡単に服用できる。水分や栄養補給も同時にでき、一石二鳥の予防法。設備が整っていない地域でも役立ち、実用化を急ぎたい」と話している。


安全性も高い

 神谷茂杏林大教授(感染症学)の話 効率よく製造でき、免疫効果も期待できる。人間が日常に食べる卵を使っていることから安全性も高い。感染症予防につながる素晴らしい研究成果だ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年09月29日 更新)

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