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頻尿治療にボツリヌス毒素 臨床試験で効果 岡山大と川崎医科大 筋肉正常化作用を応用

ボツリヌス療法で使う内視鏡を手にする横山講師

小熊恵二教授

 日中、夜間を問わず、高齢者を悩ませる急な尿意と失禁―。ぼうこうの筋肉が過剰に反応する「過活動ぼうこう」は、加齢が原因とされる症状の一つ。一般的な投薬治療の効果がみられない頻尿患者の治療として、岡山大病院(岡山市鹿田町)と川崎医科大付属病院(倉敷市松島)が、猛毒で知られる「ボツリヌス菌」を使った臨床試験に取り組んでいる。

 日本排尿機能学会の調査によると、五十―八十代に多い「過活動ぼうこう」の患者は全国で約八百十万人。そのうち、薬を投与しても効果がなかったり、便秘などの副作用で薬が使用できない患者は約二割にも及ぶ。

 食中毒の原因となるボツリヌス菌。その神経毒素は呼吸困難や視力障害、手足のまひなどを引き起こすが、一方で過剰に収縮している筋肉の動きを正常に戻す作用がある。これまでまぶたや顔面のけいれん治療などに応用されているほか、過活動ぼうこうも、二〇〇〇年ごろから欧米で臨床試験がスタートしている。

 岡山大病院と川崎医科大付属病院の臨床試験は、局所麻酔をした後に尿道からぼうこう内部に内視鏡を挿入、ぼうこう壁の内側約二十カ所に微量の毒素を注射する。効果は数日目から表れ、約六カ月間持続するという。手術は外来で対応でき約三十分で終了する。

 欧米との大きな違いは、岡山大大学院の小熊恵二教授(病原細菌学)が精製した神経毒素のみを活用している点だ。

 ボツリヌス毒素は、毒性を発生する「神経毒素」と、毒素を保護する「無毒成分」で構成されているが、これまでの治療はこの複合体が用いられてきた。小熊教授が精製し、両病院が使用しているのは複合体ではなく、「神経毒素」だけを取り出した製剤。効き目を低下させる「抗体」ができにくくなり、繰り返し投与できると期待されている。

 岡山大病院が二〇〇四年十一月から先行実施した臨床試験では、十九人中十八人の症状が改善、問題となる副作用もなかったという。神経毒素のみによる製剤で治療を試みるのは世界でも例が無く、結果は小熊教授と川崎医科大付属病院で治療を担当する横山光彦講師が共同で欧州の医学専門誌に効果を発表した。

 小熊教授は「毒素は(将来的に)ほかの疾患にも使えると思う。脳梗塞(こうそく)の後遺症で筋肉が固まってしまった場合の治療も期待できるだけに、今後も臨床試験に力を入れていきたい」としている。

 横山講師は「薬が効かない患者にはこれまで決定的な治療法はなく、非常に有効な方法。患者の負担も軽い」と話している。

 問い合わせは、岡山大病院泌尿器科(086―223―7151)、川崎医科大付属病院泌尿器科(086―462―1111)。


日本排尿機能学会による自己チェック項目

◎尿をする回数が多い

◎急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがある

◎我慢できずに尿を漏らすことがある

※一つ以上当てはまれば過活動ぼうこうの可能性がある
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年10月09日 更新)

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