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(1)オンコロジーセンター 倉敷中央病院泌尿器科主任部長・オンコロジーセンター長 寺井章人

病院主催の医療従事者研修会。オンコロジーセンターの医師らが講師を務め、がん診療について情報提供した=2016年11月30日、倉敷中央病院総合保健管理センター

寺井章人泌尿器科主任部長・オンコロジーセンター長

 全国どこでも質の高いがん医療を提供することができるよう、厚生労働大臣により全国にがん診療連携拠点病院が399カ所指定されており(2016年4月1日現在)、当院もがん診療連携拠点病院に指定されています。

 がん診療連携拠点病院の指定要件として、(1)手術、放射線、化学療法のさらなる質の向上を図る(2)がんと診断された時点から身体的・精神心理的・社会的苦痛などに対して適切に緩和ケアを実施する(緩和ケアチームの設置)(3)「がん相談支援センター」を設置して患者、医療関係者などからの相談を受け付ける(4)院内がん登録を実施し情報公開に努める(5)診療所や一般病院に診療支援を行い在宅医療と連携する―などの条件を満たさなければいけません。

 当院では、数多くの診療科においてそれぞれ専門的、高度先進的ながん治療が行われています。これを「縦糸」とすると、がん診療連携拠点病院の指定要件として求められていることは、診療科をまたいで全病院的にがんを横断的に診療できる体制を構築することであり、まさに「横糸」というべきものになります。各診療科が個別的に対応できることではありません。

 当院において、がんの診療全般を俯瞰(ふかん)して統括すること、またがんを横断的・集学的に診療できる体制を構築すること等を目的として「オンコロジーセンター」を設立しました(オンコロジー=腫瘍学)。「縦糸」と「横糸」を有機的に絡ませることが目的です。

 がんの診療に携わっている職種は、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、放射線技師、臨床検査技師、栄養士、臨床心理士、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカー等々と数多くあり、チーム医療が行われています。がん診療に係るこれらのメディカルスタッフが情報を共有したり意見を交換・調整したりして、より良い診療体制を築いていくための場としてオンコロジーセンター運営会議が定期的に開催されています。

 がん医療の担い手となる高度の知識・技術を持つがん専門医師、がん医療に携わる看護師・薬剤師・医療技術者等の育成を推進することも目的の一つです。また、当院のように大規模な組織ならではの弱点が見つかれば対応する必要もあります。

 これだけですと、患者さんには直接関係ないただの院内組織と思われるかもしれませんが、そうではありません。オンコロジーセンターの活動の一環として、2015年7月より新たに臨床腫瘍外来を立ち上げました。

 この外来では、CT等の画像診断でがんが疑われるか、生検でがんの診断は間違いないが、原発巣がはっきりしない等の状況のため治療方針がなかなか決まらない患者さん(これもいわゆるがん難民の一種です)に対して、迅速に診断を確立し、診療主科を決定し、治療を早急に始めることを最大の目的としています。

 本シリーズでは、上記の臨床腫瘍外来、がん相談支援センター、外来化学療法センター、がんリハビリテーション、緩和ケア、院内がん登録、地域連携など、現在のがん診療を取り巻く多様な側面について一般の方々に分かりやすく解説していきたいと思います。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 てらい・あきと 大阪教育大学付属高校池田校舎、京都大学医学部卒。同大大学院医学研究科修了。京都大学病院を経て2001年から現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本内視鏡外科学会泌尿器科領域技術認定、日本泌尿器学会・日本泌尿器内視鏡学会泌尿器腹腔鏡技術認定。


※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年02月06日 更新)

タグ: がん倉敷中央病院

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