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健康寿命延伸へ 内服、運動、減塩食が大切 佐藤哲也・岡山赤十字病院循環器内科部長が講演

佐藤哲也循環器内科部長

 岡山赤十字病院(岡山市北区青江)循環器センターの「市民公開・心臓病講座」が5日、山陽新聞社さん太ホール(同柳町)で開かれた。佐藤哲也・循環器内科部長が「超高齢化社会にそなえて 心臓病予防に大切なこと」のテーマで講演。その要旨を紹介する。

 2025年問題という言葉をよく耳にするようになりました。団塊の世代の方々が、75歳以上の後期高齢者になる年です。ここから人口減少のスピードが加速されます。しばらくは総人口は減るのに65歳以上は増える。日本は世界的にみてもまれな超高齢化社会に突入します。

 こうした超高齢化社会を迎えるに当たって、われわれが心がけなければならないのが、介護などを受けずに自立して暮らせる健康寿命を延ばすことです。男性は平均寿命が79歳で健康寿命との差が9年、女性は86歳で13年の開きがあります。健康寿命を平均寿命に近づけよう、というのが今日のお話です。

■虚血性心疾患

 まず、狭心症。動脈硬化により心臓の冠動脈の内腔(くう)が狭くなる病気です。その原因は高血圧やコレステロール、肥満、糖尿病などです。心臓には大きな血管が3本あります。きれいな水道管をイメージしてください。その水道管の内側に、コレステロールがたまって内腔が狭くなっていきます。少し歩いただけで息苦しくなったり胸が痛くなったりするのが狭心症。完全に詰まって、急に苦しくなるのが心筋梗塞。この二つを虚血性心疾患と言います。

 われわれが得意とするカテーテル治療で狭くなった場所を広げて治すことはできますが、そうならないことが大切です。そのために必要なポイントは三つ。内服と運動と減塩食です。

■高血圧

 次に高血圧ですが、日本には約4千万人の患者さんがいます。心臓が収縮して血圧を送り出すときが最も高くなる収縮期血圧、心臓が拡張して全身を巡った血液が心臓に戻ってくるときが最も低い拡張期血圧です。どちらが高くてもよくありません。この数字を覚えてください。140と90。収縮期は140以下、拡張期は90以下。これが臨床的にはほぼ正常だと言うことを覚えて帰ってください。

 血圧を決めるのは血液を押し出す力や血管の抵抗、全体の血液の量などです。そしてコントロールするものには血管の硬さがあり、分かりやすく血管年齢と呼ぶこともあります。

 血圧は椅子に座って、上腕を測るのが一番正確です。血圧を下げればリスクは減ります。心臓や血管障害、脳卒中も減ります。血圧を正常にコントロールするのも内服、運動、減塩食です。

■心不全

 次に心不全。これは病気ではなく病態なので、なかなか理解しづらいのですが、高血圧や虚血性心疾患など種々の心臓病が原因で、心臓が血液を送り出すポンプとしての機能を低下させてしまうことをいいます。患者さんは増えています。

 症状は、まず息切れや呼吸困難。農作業が以前のようにできなくなったとか、階段を上るのに途中で休まなくてはいけなくなったとか、そういうことがあると心不全の可能性があります。体重が増えたり、食欲がなかったり、一番分かりやすいのはすねや足の甲のむくみです。

 原因は動脈硬化やお酒の飲み過ぎ、高血圧の治療をせずに放っておく、そして感染症です。風邪やインフルエンザには注意してください。高血圧の方で、風邪がきっかけで急性心不全になる方は多いのです。塩分の取りすぎ、過労やストレスもよくありません。

■予防

 予防にはDESが大切です。Dはダイエット、食事を工夫して太らないようにしましょう。Eはエクササイズ、ほどよい運動をしましょう。Sはストップスモーキング、禁煙ですね。

 そしてきちんと薬を飲むこと。きちんと内服していれば心臓病は10分の1になるけれど、飲み忘れると1・5倍になります。

 ウオーキングなど適度な運動も注目されています。食後1時間以内を避け、約30分間、1日6千歩を目標に、できれば毎日歩くのが効果的です。ウオーキングを基本に卓球やテニスなど軽い運動も楽しみましょう。歯を食いしばるような筋肉トレーニングは心臓には良くありません。

 減塩食は薄味であっても工夫次第でおいしく食べられます。だしや酸味をきかせたり香味や辛味で味にアクセントをつけましょう。汁物は具だくさんにしてください。

 さとう・てつや 徳島大医学部卒。岡山大病院、豪アルフレッド皇太子病院臨床留学などを経て、2003年から岡山赤十字病院に勤務。11年から現職。日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医、日本内科学会専門医、アメリカ内科学会上級会員。岡山大学医学部臨床教授。日本心血管インターベンション治療学会代議員、同中国四国支部運営委員、日本循環器学会中国支部評議員、日本内科学会中国支部評議員。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年02月20日 更新)

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