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(2)どんな治療法があるの? 倉敷スイートホスピタル副院長・リウマチセンター長 棗田将光

棗田将光副院長・リウマチセンター長

 前回は関節リウマチの体の中で起こっていることをお話ししました。関節リウマチは主に関節が侵される疾患ですので、内科医を受診するのか整形外科医を受診するのか迷われている方も多くいらっしゃると思います。関節リウマチは、「全身的な炎症性疾患」という面からは内科的疾患ですが、「関節の疾患」という面からは整形外科的疾患ともいえます。現在では「リウマチ科」という標榜(ひょうぼう)のとおり、「リウマチ医」という専門分野があります。リウマチ専門医は内科医であれ整形外科医であれ、関節リウマチ診療に特化している医師です。そこで今回は、関節リウマチの治療法についてお話しいたします。

 近年までに新薬が次々に登場し、特に2003年以降、「生物学的製剤」という画期的な薬剤が登場してからは、関節破壊の進行を劇的に抑えることができるようになりました。しかし、いったん関節が破壊されれば日常生活に大きな支障をきたしてしまいます。どの病気でもいえることですが、早期発見と専門医による適切な早期治療がなされれば、「治癒」と同様の「寛解」=図1=という状態に到ることができ、痛みや関節変形による機能障害のない日常生活が送れるようになります=図2

 さて薬物治療ですが、基本的に関節リウマチの治療は系統的(流れに沿った)な薬物治療が主体となります。薬にはたくさんの種類がありますが、日本リウマチ学会やアメリカ/ヨーロッパリウマチ学会でも、その薬物治療の基本的な使用法は明確に推奨されています。

 関節リウマチは誤った免疫の情報(免疫の異常)が原因となって関節に炎症を起こします。こういった背景から、治療は炎症を抑える薬「抗炎症薬」とともに、免疫異常を是正する「抗リウマチ薬」が主体となります。病気の勢いが激しい時は「ステロイドホルモン」という薬を一時的にうまく使用するのもリウマチ専門医の役割と言えます。

 ここでは主に抗リウマチ薬についてお話しいたします。抗リウマチ薬は、従来型抗リウマチ薬と生物学的抗リウマチ薬、分子標的型抗リウマチ薬の三つのグループに分けられます=図3。薬物治療の基本は「メトトレキサート」という従来型抗リウマチ薬で治療を開始し、この薬剤を増量するか他の従来型抗リウマチ薬を併用していきます。それでも効果が得られない場合は生物学的抗リウマチ薬を開始し、3~6カ月ごとに治療効果を判定した上で、2剤目、3剤目の生物学的または分子標的型抗リウマチ薬に変更し関節破壊の抑制を目指します=図4。種々の薬物治療で効果が得られなかった場合、当院リウマチセンターでは「白血球除去療法」という、薬物を使わない治療法もあり、一定の効果も得られています。

 今まで述べましたように関節リウマチの治療において、「しっかり炎症を抑え、きちっと関節の変形を防止し、痛みのない日常生活を過ごし、健康寿命をのばしていくこと」が理想の目標ですが、実際の診療では患者さまごとに治療の反応性が異なり、社会的背景も考慮しながら個々のニーズにあわせた薬物治療の目標を設定し、患者さまの満足度向上に努めていきます。

 次回は「外来における看護師のサポート」です。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年02月20日 更新)

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