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(2)臨床腫瘍外来とオンコロジーボード 倉敷中央病院放射線診断科主任部長 小山貴

がんに関わる多職種の専門家が活発に意見を交わしながら治療方針を検討するオンコロジーボード

小山貴放射線診断科主任部長

 体のさまざまな部位に生じるがんは局所では症状をきたさなくても、転移によって初めて症状を引き起こすということがあります。そうした場合には、治療方針を決定するために、まずは体のどこに転移の原因となるがん(原発巣)が潜んでいるかを探しに行くことになります。CTなどの画像検査ですぐに原発巣が見つかる場合は話が早いのですが、そうでない場合には診断と治療方針がつかずに困ったことになります。

 当院ではオンコロジーセンターの中心的な活動の一つとして、上記のような転移巣が見つかったものの原発巣が分からない患者さんに対応すべく、2015年7月に臨床腫瘍外来を開設しました。

 この臨床腫瘍外来を紹介受診される方については、まずはこれまでに検査された画像を詳細に再検討します。悪性リンパ腫や原発巣が分からない腫瘍の診断にはFDG―PETが非常な効力を発揮することが多く、PETを追加で行うことが望ましい場合には必要に応じて検査をオーダーします。実際、肺がん、大腸がんといったがんでは小さな原発巣から大きな転移巣が形成されることがあり、このような例ではPETを含めた画像の再検討により原発巣の診断がつくこともあります。

 最終的ながんの診断を決めるために針によりがん細胞を採取する生検と呼ばれる手技が必要となることが多く、内視鏡や気管支鏡、あるいはCTや超音波を用いて体の外から針を用いて生検手技を行います。例えばリンパ節が腫大する場合には悪性リンパ腫とがんの転移を区別する必要が生じますが、リンパ節に細い生検針を入れることで腫瘍細胞を採取できることが多いのです。

 また女性の卵管に生じるがんなどは原発巣は非常に小さく、お腹の中で多数の腫瘤(しゅりゅう)を形成することがしばしばですが、このような症例においては超音波で腹壁の下にある病変を描出しながら生検することで、従来の手術による方法に比べてはるかに非侵襲的に細胞を採取することが可能となります。

 最終的にどのような種類のがんであるかは生検により得られたがん細胞を病理医が顕微鏡で評価して診断を決定します。

 こうして得られた最終的な病理診断に基づき、どの診療科でどのように治療をするのがよいかということを討議するための場として、オンコロジーボードを毎週開催してます。またオンコロジーボードでは臨床腫瘍外来の症例に限らず、既に診断が確立した他の診療科の悪性腫瘍に関しても、治療方針や化学療法の内容をめぐって症例検討を行っています。

 当院のオンコロジーボードには臨床腫瘍外来に関わる医師の他、看護師、薬剤師といった多職種が参加しています。がんの治療においては最近、さまざまな治療の選択肢が考えられるようになってきました。医師が患者さんにもっとも良いであろうと思われる診療を提供するためにも、経験豊富な多様な領域の専門家の意見を交換しあうことがとても重要であり、オンコロジーボードはそのための場として機能しています。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 こやま・たかし 開成高校、京都大学医学部卒。京都大学病院、大阪赤十字病院などを経て2014年4月から現職。日本医学放射線学会放射線診断専門医、日本医学放射線学会研修指導者。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年02月20日 更新)

タグ: がん倉敷中央病院

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