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「栄養療法」県内でも注目高まる 48施設導入、10年で2倍に

栄養療法に携わる医師(左右の2人)と管理栄養士。県内で開かれる学術集会に向け、意見を交わす

 入院中の患者らを栄養面から支える「栄養療法」への注目が医療現場で高まっている。医師や歯科医師、看護師、管理栄養士、薬剤師らでつくる「栄養サポートチーム(NST)」を持つ医療機関は岡山県内でも増え、関係学会の認定を受けたのは48施設(2016年)と10年前の約2倍に上っている。「低栄養」を防ぐための市民への啓発も始まった。

 「栄養サポートは全ての治療の基本。1人の患者を多職種で支えるチーム医療の代表格」。消化器外科医でもある川崎医療福祉大の平井敏弘特任教授は力を込める。

 平井教授は川崎医科大へ赴任した03年からNST活動を実践。特にがん患者に対する手術前後の栄養管理を徹底し「合併症や感染症が減り、患者の予後は格段に良くなった」と説明する。

 NSTは1970年代に米国で生まれた。医科、歯科といった診療科の壁を越えて職種が連携。患者の栄養状態を改善することで免疫力を高め、入院日数の短縮を図る。近年は治療や介護のみならず、疾患予防の観点からも注目されるようになった。

 日本では98年に三重県の病院が取り入れたのが始まり。日本静脈経腸栄養学会が認定したNST活動に取り組む医療機関(2016年)は岡山を含め約1400施設。10年度の診療報酬改定で「NST加算」が創設されたことも増加を後押ししているという。

 医療現場での成果を社会に還元する動きも出ている。医療、福祉の幅広い職種でつくる一般社団法人「チーム医療フォーラム」(事務局・千葉県)が中心となり、低栄養や筋肉の減少を防ぐことの大切さを訴える全国キャンペーンが15年にスタート。「元気に食べてますか?」をキャッチフレーズに、県内でも昨年10月、初めての街頭啓発活動が岡山市で行われた。

 キャンペーンに賛同する岡山済生会総合病院の犬飼道雄内科医長は「高齢者に限らず若いころからの一貫した栄養管理が大切。地道な活動を通じ、社会の機運を盛り上げたい」と話す。

 低栄養 健康な体を維持するために必要なエネルギーやたんぱく質が不足している状態。筋力が低下して日常生活に支障を来すとともに、抵抗力が落ちることでさまざまな病気のリスクが高まり「健康寿命」を縮める要因の一つとされる。厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、低栄養傾向の高齢者の比率は16・7%(2015年)に上っている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年02月22日 更新)

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