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季節の変わり目、子どもの病気に注意 小児ぜんそく RSウイルス感染症

子どもを診察する春摘医師。初期症状のうちに、診察を受けることが大切だ

RSウイルスの感染経路(イラスト)

 日ごとに朝晩の寒暖差が大きくなる秋は、大人だけでなく、免疫力が弱い子どもたちにとっても気を付けたい季節。激しい発作を伴う「小児ぜんそく」と、生後間もない乳幼児の場合、重症化する恐れがある「RSウイルス感染症」について、専門医に症状を解説してもらいながら、治療法や防ぎ方を考えてみる。


小児ぜんそく 初期症状出たら診察 風邪ひかないことが大切

 発作が起こると激しくせき込み、夜も眠れない。一、二歳が発症のピークとされ、秋から冬にかけ注意が必要だ。

 ぜんそくは、気管支や気管など空気の通り道となる「気道」が炎症を起こして狭くなる病気。国立病院機構南岡山医療センター(岡山県早島町)の春摘誠医師=小児科=は「気管支の粘膜に炎症を起こす風邪は発作を誘発しやすい。まず風邪をひかないこと」と言う。

 四十、五十代になって発症する「成人ぜんそく」はストレスや大気汚染なども原因となるが、小児ぜんそくはダニやほこりに過敏に反応することで起こりやすい。

 熱はないのにせきが一週間も続いたり、明け方に目が覚めてしまうほどせき込む症状があれば、ぜんそくの疑いがある。症状が進行すると、食欲が落ち会話もしなくなる。中には呼吸困難に陥るケースもあり、「初期症状が現れたら早めに小児科で診察を」と春摘医師。

 小児ぜんそくは、アレルギーとなる原因物質を特定し除去することで予防が可能。秋は夏場に大量発生したダニの死がいやふんが室内にまん延しており、毎日布団を干したり、部屋をこまめに掃除して取り除くといい。犬や猫のふけも原因になるので、室内でペットを飼わないようにするのも一つの方法だ。

 次第に寒さが増すこの時期は、激しい運動をした後に発作が起こることも。春摘医師は「冷たく乾燥した空気が直接気管に入り、粘膜が冷やされてしまうのが原因。乳幼児だけでなく運動量が増える小学校高学年から中学生も注意を」と呼び掛ける。準備運動をしっかりして、激しい運動と軽い運動を交互に繰り返したり、マスクをすることで発作は防げるという。

 治療は、症状が軽い場合は気管支を拡張する薬を吸入するが、最近は体に張り付けて徐々に薬を体内に浸透させていくタイプも出ている。症状が進むと炎症を抑えるステロイド剤などを点滴で投与する。

 春摘医師は「十分な睡眠を確保するなど規則正しい生活を送り、バランスのとれた食事をすることも予防につながる。この時期はあらゆる対策を取ってほしい」と話している。


RSウイルス感染症 重症化すれば入院も 人込み避けマスクも活用

 二歳までにほぼ100%が一度は感染するという。どこにでも存在するウイルスで、せきや鼻水といった風邪の症状に酷似。しかし生後一カ月から二歳までは、重症化すれば、入院が必要なケースもある。十月下旬から四月にかけて流行、ピークは十二、一月。

 国立病院機構岡山医療センター(岡山市田益)の久保俊英・主任小児科医長は「生後数カ月の赤ちゃんは一般的には、母親からもらう免疫力であまり病気にかからない。ただし、RSウイルスにはあまり効果がなく感染してしまう」と話す。

 主な感染経路は、せきや会話で生じる飛沫(ひまつ)や感染者との接触。感染した乳幼児がなめた物やおもちゃなどからウイルスが手に付き、目や口、鼻などの粘膜から体内に浸入することもある。

 感染後、数日の潜伏期を経て鼻水やせきといった症状、高熱がみられる。「高熱は長くは続かないが、発病から三日前後が最もひどく、ミルクの飲みも悪い。『ゼーゼー、ヒーヒー』と苦しそうに呼吸している場合も病気を判断するポイント」と久保主任医長。

 大人にも感染するが、体力があるため風邪をひいたような症状ですむ。だが、乳幼児はウイルスが気管の奥まで入り込み、重症化することもある。久保主任医長は「岡山医療センター小児科へ入院する患者の約一割が該当するなど毎年多くの感染者がおり、中には人工呼吸器が必要なケースもある。小児ぜんそくや乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因になるともいわれており、早めの受診が大切」と強調する。

 ただ、同感染症に対する確実な治療薬はないのが現状。点滴や酸素吸入など症状に合わせた対症療法が中心だ。感染前にウイルスに対する抗体を筋肉注射する予防法はあるが、対象は重症化のリスクが高い早産児らに限られており、いかに感染を防ぐかが重要なポイントとなる。

 久保主任医長は「おもちゃの消毒、乳幼児をむやみに人込みに連れて行かない、マスクをするのも効果的。RSウイルスは乳幼児の代表的な呼吸器感染症だが、意外に知られておらず、まずは正しい知識を持つことが大切」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年10月30日 更新)

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