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医療技術産業戦略コンソーシアム 梶谷共同議長(川崎医大名誉教授)に聞く 日本発の機器生み出す 関係団体まとめ研究実用化

梶谷共同議長

 高性能な手術ロボットや新しい人工臓器など、日本発の革新的な医療機器開発に取り組む、医療技術産業戦略コンソーシアム(METIS)が本格始動した。各省庁が垣根を越え、産官学一体となって推進するのが最大の特徴だ。和地孝・テルモ会長とともに、共同議長として運営に当たる梶谷文彦・川崎医科大名誉教授(前岡山大教授)=循環生理学・医用工学=に、活動内容や将来展望を聞いた。

 ―コンソーシアムの目的は。

 「二〇〇一年に岡山大など大学やメーカーに加え、厚生労働、経済産業、文部科学省からの代表三十人で設立した。国立循環器病センターの北村惣一郎総長やオリンパスの菊川剛社長らも入っている。日本発の機器を生み出すために、メーカーや医療施設など関係団体との調整や目標設定など総括的な役割を担う。実用化に向けた提言もする」

 ―設立の背景は。

 「医療機器の世界市場は約二十兆円で、日本は約二兆円と一割程度。市場はアジアを中心に年15%の伸びを見せており、日本も医療機器製造を重要産業の一つに育てようという考えが生まれた。先行している欧米に追いつくには、競争力を高めなければならない。そこで、研究成果を実用化に結びつけようとする考えが希薄だった大学を動かしたり、ばらばらだった関係団体を一つにまとめる狙いがある」

 ―具体的な取り組みは。

 「今年、コンソーシアムは大きく動き出す。重点的に推進するテーマとして七分野を選定したからだ。超音波やカテーテルを使った標的治療▽内視鏡ロボットなど患者の負担が少ない低侵襲治療機器▽人工心臓など臓器機能補助機器▽骨、軟骨の再生医療―など。五年以内に臨床研究を開始できる見込みがあるか、特許取得が可能かどうか、ニーズが増大するかなどを検討した上で、さらに絞り込み研究に着手する」

 ―岡山大も医歯工連携を進めたり、レベルの高い研究に取り組んでいる。

 「ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)という研究では最先端を走っている。そのままでは細胞に入ることのできないタンパク質や薬剤などの有用物質を、効率よく細胞に取り込ませて働かせたり、肝臓や脳などの特定細胞だけにピンポイントで物質を送り届ける技術を開発している。人工肝臓や骨再生の研究も十分世界に通用する。ぜひ積極的にかかわってほしい」

 ―今後の展望は。

 「機器の開発が医療経済と患者のQOL(生活の質)向上に大きく貢献するのは間違いない。ただ、医療機器のない医療が考えられない時代になったにもかかわらず、いまだに薬の延長として考えられているのが現状。今後も次々と機器が開発されていくだろうが、いくら機械がよくても使う人間のレベルを上げなければ効果は十分発揮されない。操作や保守点検などを行う優秀な臨床工学技士の養成が不可欠で、コンソーシアムでの取り組みを機に、合わせて充実させたい」


 かじや・ふみひこ 川崎医科大教授など経て、2000年から05年3月まで岡山大教授。現在は川崎医療福祉大、川崎医療短大教授。元国際医用生体工学連合会長。大阪大医学部卒。愛媛県出身。65歳。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年07月04日 更新)

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