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“サイレントキラー” 高血圧にご用心 岡山済生会総合病院 井原敬子医長に聞く 

診察室で患者の血圧を測定する井原医長。秋から冬にかけ血圧は高めになるので注意が必要だ

血圧の分類(図)

さまざまな血圧計が陳列されている売り場。用途に応じたタイプを選ぼう=岡山市内のドラッグストア

 国内の患者が三千万人を超すとされる高血圧。自覚症状は少なく、脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞を引き起こすことから、「サイレントキラー」(沈黙の殺し屋)の異名を持つ。寒暖差が大きいこの時期の注意点、自宅でできる測定、効果的な予防など―高血圧対策を考えてみた。

 「三十歳以上のうち男性は約五割、女性は約四割の人が高血圧。驚くべき数字でしょう」

 岡山済生会総合病院(岡山市伊福町)の井原敬子内科医長が資料を手に説明する。「体が痛くなったりする症状がないため、健康診断で指摘されても放置する人が多い。でも最終的には命にかかわる病気なんです」

 血圧とは、心臓が拍動を繰り返して血液を送り出す際、血液が血管を通るときにかかる圧力のこと。心臓が縮んで血液を勢いよく押し出した瞬間を最高血圧、逆に血液を吸い込んで膨らんだ状態を最低血圧と呼ぶ。

 高血圧とは、血管に正常より高い圧力がかかっている状態のこと。血管はダメージを受けやすく、慢性化すると動脈硬化のほか、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患、脳卒中などの発作を引き起こす。最も患者が多い生活習慣病だ。

 目安は、医療機関で測定した場合は、最高が一四〇以上か、最低が九〇以上。だが、すぐに入院というわけではなく、治療は、生活習慣の改善指導から始まる。

 「睡眠を十分とったり、バランスよい食事を心掛けてもらい、約一カ月間様子を見る。それでも数値が正常に戻らなければ投薬治療。治療は、その人の体の状態や合併症などを参考にしながら進める」と井原医長。糖尿病を患っていたり、腎疾患患者は動脈硬化のリスクが高く最高一三〇、最低八〇から薬を使用するケースもあるという。

 特に注意が必要なのが、寒さが増す秋から冬にかけてだ。

 寒さが交感神経を刺激するため血管が収縮し、一般的に血圧は高くなるとされる。このため普段は血圧を下げる薬が必要ない人でも冬場だけ使用したり、薬を増量するケースも。血圧が一〇上昇すれば、脳卒中になる率は男性で20%、女性で15%上がるとされる。

 予防は、急激な温度変化への注意▽食生活を乱さない▽適度な運動―が代表的。

 井原医長は「例えば外出時は重ね着するなど防寒に配慮する。家の中でも寒暖差があることがある。せっかく風呂で温まっても、冷えた脱衣場やトイレは危険で、ヒーターを置くなど工夫してほしい」と話す。食生活については塩分の取りすぎへの注意を呼び掛ける(日本高血圧学会が推奨する一日の摂取量の目安は六グラム未満)。「塩分は循環血液量を増やし血圧を上げる作用がある。忘年会で食事や飲酒の機会が増えるかもしれないが、普段以上に減塩を」

 運動不足も高血圧の大きな要因。散歩や軽いジョギングなど適度な運動は血液の流れをよくするだけでなく、肥満防止にも効果的。主治医と相談しながら取り組みたい。

 井原医長は「まずは高血圧にならないよう、日々の生活を大切に。そして、定期的に血圧を測り、異常を見逃さないように気を付けて」と話している。


厚生労働省による高血圧チェック項目

□濃い味付けのものが好き
□野菜や果物はあまり食べない
□運動をあまりしない
□家族に高血圧の人がいる
□ストレスがたまりやすい
□お酒をたくさん飲む
□たばこを吸う
□血糖値が高いと言われたことがある
□炒め物や揚げ物、肉の脂身など油っぽい食べ物が好き

※当てはまる項目が多いほど、高血圧になりやすいので注意が必要


血圧計 自宅で簡単測定 高機能から安価まで豊富

 生活習慣病に対する関心の高まりから、ここ数年、多くの血圧計が発売されている。病院で使用する水銀血圧計ではなく、数値の見やすいデジタル血圧計で、メーカーが工夫を凝らした高機能機種から、基本性能に絞った安価なものまで種類はさまざまだ。

 「液晶画面が取り外せるタイプがお勧め。病院に行く際、液晶画面ごと持ち運んで医師に見てもらうことができます」。岡山市田中のドラッグストアで、店員が最新機種を説明してくれた。

 「血圧計」と表示されたコーナーは十種類近くが並び、価格は七千―三万円。病院と同じ二の腕で測る上腕式のほか、小型で収納しやすい手首式。過去に測定した数値を記憶したり、グラフ化して表示する機能が付いているものなど、どれを選んで良いか悩むほどだ。

 「健康診断が行われる秋から冬にかけて販売数が伸びる。七千円前後が人気」と担当店員。岡山市内の別のドラッグストア店員は「時計が内蔵されていて、測った時間が分かる機種が売れている」と話す。

 血圧は定期的な測定が大切で、家庭での保管場所などに応じて選ぶのもいい。各店ともデモ機があるので、使い勝手を確かめた上で購入することもできる。


仮面高血圧に注意! 医療機関よりも家庭の方が高い

 自宅での血圧測定を推奨している日本高血圧学会のガイドラインに沿って、家庭測定のポイントを整理してみよう。

 病状によって違いがあるが、週に三~五日、朝、夕、同じ時間帯に測るのがよい。朝は起床後一時間以内で朝食前、夜は就寝直前。トイレを済ませ、一、二分は静かに座り安静にしてから、上腕(二の腕)を心臓とほぼ同じ高さにして測定を始める。

 家庭で測る高血圧の目安は、医療機関での測定数値よりも低く、最高一三五、最低八五とされている。

 医療機関での血圧が正常でも、家庭で測ると高い「仮面高血圧」の人は要注意。病院で異常を見つけにくく、いつの間にか症状が進行している可能性があるからだ。

 逆に、家庭血圧は問題ないのに緊張などで診察室での血圧が高くなる「白衣高血圧」は、すぐには問題ないものの、定期的な検査が望ましい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年11月17日 更新)

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