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C型肝炎新型薬 岡山大大学院・山本教授に聞く 完治率アップ 副作用、高額治療費が壁

山本和秀教授

岡山県内のC型肝炎ウイルス検査受診者(グラフ)

 感染を放置すると慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんと進行する恐れが高いC型肝炎ウイルス。薬害訴訟が大詰めを迎えているが、150万~200万人に上る国内感染者の多くは、輸血や集団予防接種での注射針の使い回しが主な原因とみられ、今も地道な治療が続いている。治りにくい慢性肝炎に近年、効果を発揮している新型インターフェロンについて、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の山本和秀教授(消化器・肝臓・感染症内科学)に解説してもらい、治療の最前線をのぞいた。

 C型肝炎ウイルスに感染しても多くの場合、自覚症状がない。自然治癒する人もいるが、七割の患者は慢性肝炎に移行する。ウイルスに感染しているかどうかは血液検査で分かるものの、気付かずに放置していると十年以上かけ肝硬変、肝臓がんに進む。年間三万四千人が亡くなる肝臓がんの八割近くはC型肝炎が原因だという。

 医療現場の感染予防対策が不十分だった一九八〇年代の感染が多いとされ、新たな感染はほぼなくなった。山本教授が治療する肝炎患者で最も多いのは六十代。「慢性肝炎は既に発症の山を越えたとみられるが、肝臓がんは今がピークだろう」という。

 肝炎治療は注射薬のインターフェロンでウイルスを排除するのが柱。ただ、ウイルスの型や量で投与方法や期間、効果が異なる。治りにくいとされ、日本人の半数以上を占める「1b型高ウイルス量」のタイプは、以前のインターフェロン単独投与ではほとんど効果がなかったが、二〇〇四年に公的医療保険が適用された新型のペグインターフェロンと飲み薬のリバビリンの併用投与で半数の患者が完治するようになった。

 ペグインターフェロンは薬の効果が長続きするため、従来の週三回より少ない週一回の注射で済む。リバビリンは毎日二回内服する。治療期間はほぼ一年に当たる四十八週間。治療開始後も血液検査でウイルスの有無を調べ、早期にウイルスを排除できた患者ほど完治の可能性が高い。だが、二十四週以内に血液検査が「陰性」にならない場合は完治は期待できず、治療を中止し他の方法を検討する。

 「問題は高額な治療費と副作用」と山本教授。費用は三割の患者負担で月六万~七万円もかかる。副作用で多いのは倦怠(けんたい)感、食欲不振、発熱、頭痛など風邪に似た症状と貧血で、脱毛やうつ症状などが起こることもある。

 「副作用は高齢の患者ほど重い。七十代以上はインターフェロン治療を勧められない」。インターフェロンとリバビリンの量を減らしたり、治療を中止することも多いという。

 インターフェロンが効かなかったり、副作用で治療を中止した場合、肝機能を改善する内服、注射薬を投与し肝硬変、肝臓がんへ進むのを防ぐ。また、C型肝炎になると、肝臓に蓄えられる鉄分が増え炎症が悪化するのが分かっており、採血で血液中の鉄分を減らす瀉血(しゃけつ)療法と食事からの鉄分摂取制限を行うこともある。

 国はインターフェロン治療の患者負担額を所得に応じ月一万、三万、五万円の三段階に抑える公費助成制度を来年度から始める方針。山本教授は「投与を四十八週間から七十二週間に延ばすと完治の可能性が高まる患者もいる。助成と併せ、保険適用期間を延長してほしい」と要望している。


肝炎ウイルス検査 受診者が減少傾向

 感染を自覚しにくいC型肝炎の早期発見に向け、国は二〇〇二年度から肝炎ウイルス検査を推進しているが、思ったように効果が上がっていないのが現状だ。受診者は年々減少傾向。〇六年度は百七十三万四千人余と初年度に比べ一割も減った。受診者のうち、感染の可能性が高いと判定されたのは一万四千人余で、感染者率は0・8%だった。

 検査は市町村が集団健診や医療機関で行い、四十~七十歳の五歳刻みを対象にした節目検診と、肝機能異常を指摘された人らを対象にした節目外検診がある。このほか、一部企業の健診や保健所でも検査が行われている。

 岡山県内の場合、受診者は〇二年度、節目検診が一万五千五百五十三人(対象者の22・1%)、節目外検診が一万九千七百十二人だったが、〇五年度は節目七千七百九十七人(同9・7%)、節目外七千八十一人と初年度の半分以下になった。

 薬害肝炎訴訟の地裁判決などでC型肝炎に関心が高まった〇六年度は節目外が一万千六十五人と増えたものの、節目は六千三百二十六人(同7・7%)と減少が続いた。〇六年度の感染者率は節目が0・6%、節目外が1・4%で、年々低下傾向にある。


ズーム

 インターフェロン もともと体内で作られるタンパク質で、ウイルスの増殖を抑える働きがある。C型肝炎患者は体内で自然に作られる量だけで足りないため、人工的に作ったインターフェロンを注入し補う。ペグインターフェロンはポリエチレングリコール(ペグ)を結合させ、効果が長続きするよう改良した。副作用も従来に比べ軽い。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年11月24日 更新)

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