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骨粗しょう症の“連鎖”防げ 川崎医科大付属病院、早期発見へ力

CT画像で背骨に骨折がないかチェックする大成医長

川崎医科大付属病院で、骨粗しょう症の早期発見に取り組んでいる放射線技師と大成医長(中央)

 川崎医科大付属病院(倉敷市松島)は、骨粗しょう症を原因とする骨折やそれに伴う寝たきりを防ごうと、入院・外来患者を対象に、骨粗しょう症をいち早く発見して治療を促す取り組みに力を入れている。

 骨粗しょう症は、若いころに比べて骨量が2~3割減少して骨の構造が弱くなり、骨折が起きやすくなっている状態。閉経後の女性は特にリスクが高い。荷物を持ち上げたり、いすに座る程度の動作で背骨が折れ、本人が骨折に気付かない「いつのまにか骨折」も増えているという。

 同病院は2014年から、あらゆる診療科で胸部と腹部をレントゲン撮影した全患者と、CT撮影した60歳以上の女性を対象に、骨粗しょう症患者の洗い出しを始めた。

 まず放射線技師が対象患者のデータをピックアップする。レントゲン画像は見える範囲のみ確認するのでそのままだが、CT画像は背骨が見えやすい画像として再構築する。新たに背骨部分に特化して撮影しないので、不要な被ばくを避けられる。整形外科の大成和寛医長が、背骨の骨折、上腕骨や大腿(だいたい)骨に骨折手術痕(金属製のボルトの有無など)がないか画像をチェックする。

 骨折が見つかれば、骨粗しょう症と診断してカルテに記載し、主治医と情報を共有。骨粗しょう症を治療しているか確認し、服薬などをしていなければ、患者に治療を勧める用紙を渡す。

 大成医長は16年、取り組みの成果を調査した。15年4月~16年3月に行われた胸部・腹部のCT撮影1万2650件について調べたところ、60歳以上の女性は2364人で、そのうち背骨に骨折があったのは486人だった。骨粗しょう症の治療歴が不明だった299人に治療を呼び掛けたところ、70人の受診につながった。受診した約半数は、痛みもなく骨折に気付いていなかったという。

 「骨粗しょう症による骨折は連鎖する。2回目の骨折が起きる確率は1回目に比べ4~5倍。より早く骨折を見つけて骨粗しょう症治療を開始することが、予防につながる」と大成医長。最近ではさまざまな診療科からの紹介も増えてきており、骨粗しょう症治療の受診率は徐々に増えてきているという。同病院では今後もこの取り組みを継続し、より積極的に治療を呼び掛けていくという。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年03月20日 更新)

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