文字 

(4)外科的治療 倉敷スイートホスピタルリウマチセンター整形外科

図1

図2

図3

図4

原田遼三・倉敷スイートホスピタルリウマチセンター整形外科医師

那須義久・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科運動器医療材料開発講座助教

西田圭一郎・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科人体構成学分野准教授

 今回は関節リウマチの治療法のうち薬物治療以外の治療法について、主に外科的な治療についてお話しさせていただきます。

 簡単なおさらいですが、関節リウマチという病気は自分の体を自分で攻撃してしまう病気です。主に関節を攻撃することが多く、多くの関節が腫れて痛みがでるといった症状が特徴的です。そうした症状が続き、関節が攻撃され続けると軟骨や骨が傷付いたり、関節を動かす腱(けん)や筋肉も傷んでしまい次第に関節の構造が壊れていきます。

 現在では関節リウマチの診断が早期にされる場合が多くなり、発症早期から治療を開始されることで関節の破壊を防ぐことができるようになってきています。

 しかし、診断された時点で既に関節が壊れてしまっていたり、もしくは治療がなかなかうまくいかない場合は、その後に関節の破壊が進行してしまうことがあります。また、たとえ薬物治療がうまくいっても、関節の変形が残ってしまった場合は薬物療法による治療は困難となり、ほかの治療を考える必要が出てきます。関節リウマチの治療は、薬物治療以外にリハビリ治療、そして手術治療という3本の柱で考え治療を進めることが多いのです=図1。そのため、ある程度変形が進行している場合や、関節の症状がなかなか取れない場合はリハビリや外科的治療の提案をさせていただきます。

 リハビリといっても関節の炎症状態が強く痛みや腫れの影響で動きにくい場合と、炎症自体は落ち着いていても関節が変形している、または関節周囲の構造が固くなっている場合などではその方法が変わってきます。そのほか、関節が変形のため日常生活で使い勝手が悪い場合は変形を矯正する装具などの作製を提案させていただきます。

 ただ、リハビリ治療や装具療法をしても症状が残る場合、例えば膝が痛くて歩きにくい、手の指が曲がって使いにくい、足が変形して足の裏に痛いタコができて歩きづらい等、関節が壊れた結果生じる症状に関しては外科的治療で劇的に改善する場合があります。

 関節リウマチの手術療法は変形の程度や症状に応じてさまざまな術式がありますが、主に関節を温存する関節形成手術や、関節を人工物に入れ替える人工関節置換術などがあります。当院で行っている代表的な手術としては、手の変形に対する手術としてシリコンインプラントを使用した人工指関節置換術=図2=や、肘が壊れている場合には岡山大学式の人工肘関節置換術=図3、足の変形を矯正する手術=図4、ほかに膝や肩、股関節、足関節など全身各所の関節破壊に対して関節形成手術や人工関節手術などを行っています。

 薬物療法が発展して膝関節や股関節といった大関節の手術は減少傾向にありますが、手指や足趾(そくし)といった手術は年々増加傾向にあります。これは、おそらく関節が変形してお困りの患者さまがまだまだ多くおられるためと考えています。薬物療法で関節の腫脹(しゅちょう)や痛みは軽減できても、一度壊れてしまった関節はもとには戻りません。しかし、手術療法によって変形による痛みが取れたり、日常生活がしやすくなられる患者さまも多くおられます。薬物療法のみならず、リハビリや装具療法、手術療法についてお困りの方は一度当院のスタッフ、またはわれわれにぜひご相談下さい。

 次回は「病棟における看護師のサポート」についてです。

     ◇

 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

///////////////////////

 はらだ・りょうぞう 大阪星光学院高校、岡山大学医学部卒。津山中央病院、岡山大学病院、鳥取市立病院などを経て2016年から倉敷スイートホスピタル勤務。日本整形外科学会専門医、日整会認定リウマチ医。

 なす・よしひさ 朝日高校、徳島大学医学部卒。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科運動器医療材料開発講座助教。倉敷スイートホスピタルには毎月第2、第4水曜日外来・手術勤務。日本リウマチ学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会リウマチ医。

 にしだ・けいいちろう 高知県・土佐高校、岡山大学医学部卒。岡山大学病院運動器疼痛性疾患治療研究センター長併任。東京医科大学未来医学研究寄付講座客員教授。2004年より岡山大学大学院医歯薬学総合研究科人体構成学分野准教授。倉敷スイートホスピタルには毎週木曜日外来・手術勤務。日本リウマチ学会評議員・専門医・指導医、日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会リウマチ医、日本整形外科学会脊髄脊椎病医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年03月20日 更新)

ページトップへ

ページトップへ