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(6)疾患活動性と骨格筋量、音楽療法の効果 倉敷スイートホスピタルリハビリテーションセンター副主任(理学療法士) 藤田慎一朗

グラフ1

グラフ2

倉敷スイートホスピタルで開催されたリウマチ教室での集団的音楽療法

藤田慎一朗副主任

 今回は、リハビリテーションの立場から関節リウマチ患者さんの「疾患活動性(病気の勢い)と骨格筋量(おもに四肢の筋肉の量)について」と、「音楽療法の効果」についてお話しいたします。

■疾患活動性と骨格筋量について

 皆さんは「サルコペニア」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。高齢化していく社会の中で増加している現象で、日本語では「加齢性筋肉減弱現象」といいます。サルコペニアは一次性(加齢によるもの)と二次性(関節リウマチの慢性炎症などが原因)に分類され、骨格筋量の低下によって転倒などが引き起こされ、大きな社会問題となっています=。近年、骨格筋量や栄養状態などのさまざまな定義が存在し、運動療法と栄養状態の関係性が注目されています。

 骨格筋とは関節を動かす時に使う筋肉で、体を支えたり運動に関わる筋肉のことをいいます。関節リウマチ患者さんの場合、炎症による関節の痛みや変形などの機能障害から、運動量が低下することにより二次性のサルコペニアが引き起こされます。

 さらに、関節リウマチで炎症の原因となっている炎症性サイトカイン(TNF―αやIL―6など)と筋力との関連性が示され、炎症性サイトカインの濃度が高いと筋力低下のリスクが2~3倍になるといわれています。当院の関節リウマチ患者さんとリウマチでない方の骨格筋量を比較してみると、30代から70代まで、全ての年齢層において骨格筋量が少ないことがわかりました=グラフ1

 また、関節リウマチの病気の勢いと骨格筋量の関連性を見たところ、病気の勢いが高い(高疾患活動性)方々は、病気の勢いが低い(低疾患活動性)方々や寛解(治癒と同じ状態)になっている方々と比べて、骨格筋量が少ないということも分かってきました=グラフ2。従って、骨格筋量を維持するためには、早期から薬物療法でリウマチの病気の勢いを抑えることがとても大切であるといえます。その他にも、しっかりとした食事と身体状況に合わせた適度な運動も重要であり、病気の勢いに照らし合わせた適切なリハビリテーションを行うことで、転倒予防や日常生活動作(ADL)が維持できます。

■音楽療法の効果

 好きな音楽を聴いて、楽しい気持ちやスッキリした気持ちになったというような経験は誰にでもあると思います。音楽療法とは、そのような音楽の持つ生理的・心理的・社会的働きを用いて、心と身体の障害の回復や機能の維持改善を図り、さらに生活の質の向上や行動の変容などに向けて、音楽を意図的にかつ計画的に用いるリハビリテーション法の一つです。

 音楽療法は、各種療法(理学療法・作業療法・言語聴覚療法など)との協働により、さらなる効果を発揮します。例えば、理学療法士が行う歩行訓練などの運動療法に適切なメロディやリズムなどの音楽を用いた方が、手拍子や声掛けより効果的であるといった報告もされています。

 関節リウマチに対しても音楽療法は効果的です。集団的音楽療法は、集団の中での人間同士の絆を形成するという社会的な作用ばかりでなく、自律神経の活動が変動し、血圧や心拍数や皮膚の温度などが変化し、痛みを和らげる効果があるといわれています。関節リウマチの治療は、薬物治療や手術療法はもちろん大切ですが、自分の好きな音楽を聴いたり、一緒に思い出の曲を口ずさんだりするといった音楽療法も痛みを和らげる効果の面から有効な治療法です。家族や仲間とカラオケやコーラスも試してみてはいかがですか。

 次回は「女性の視点に立ったリウマチ治療について」です。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 ふじた・しんいちろう 2003年、宮崎リハビリテーション学院卒業(理学療法士免許取得)。倉敷廣済病院を経て12年から倉敷スイートホスピタル勤務。16年から現職。日本理学療法士協会協会指定管理者(初級)、三学会合同呼吸療法認定士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年04月17日 更新)

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