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のみ込み障害 ボツリヌス毒素で改善確認 川崎医大・青柳講師グループ  輪状咽頭筋に注入

青柳陽一郎講師

 川崎医科大の青柳陽一郎講師(リハビリテーション医学)の研究グループは、のどから食道上部を覆い、飲食物ののみ込み(嚥下(えんげ))に重要な役割を果たす筋肉にボツリヌス菌の毒素を注入することで、脳卒中などで生じたのみ込みの障害が改善することを臨床試験で確認した。治療の選択肢の一つとして普及が期待される。

 ボツリヌス毒素を注入する部位は「輪状咽頭(いんとう)筋」と呼ばれる筋肉。通常は収縮した状態にあるが、飲食物がのどを通る際に反射的に緩む働きを持つ。脳卒中や神経疾患で延髄がダメージを受けた際に働きにくくなり、食道への通過が困難になる。

 臨床試験では、患者の首に局所麻酔をした後、筋肉の活動状態などを調べる筋電図で輪状咽頭筋の位置を確認しながらA型ボツリヌス毒素を注射。この結果、九人中五人が三週間後に普通に食事ができるようになるなど、全員の摂食・のみ下し障害が改善した。

 従来、風船状のカテーテルを使って輪状咽頭筋を広げたり、切開手術をする治療法が行われているが、患者の負担が大きいという問題がある。ボツリヌス毒素を使った治療では、三十分から一時間程度で済み、最長で二年以上効果が継続。副作用も見られないという。

 輪状咽頭筋は厚さ二ミリ程度と薄く、筋電図による部位の特定には熟練を要するという。青柳講師は「今後は筋電図に超音波エコーを併用することで、より確実な治療法の確立を目指したい」と話している。


リスク少ない

 辻哲也慶応大医学部講師(リハビリテーション医学)の話 輪状咽頭筋への注射は技術を要するが、手術に比べれば患者のリスクも少なく有効だ。


ズーム

 ボツリヌス菌 土の中などにいる嫌気性菌で、毒素は食中毒を引き起こすことで知られる半面、神経伝達物質アセチルコリンの働きを阻害し、筋肉の収縮を抑える特性を持っている。このため、まぶたや顔面のけいれん治療や、額のしわ取りなど美容分野で活用されている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年12月18日 更新)

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