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検証 タミフル10代原則禁止 処方めぐり戸惑い 岡山県内医療機関 インフル流行期迎え波紋

インフルエンザの幼児を診察する医師。タミフル処方をめぐり医療現場も揺れている=岡山赤十字病院

 インフルエンザの流行期を迎え、岡山県内でも治療薬タミフルの処方をめぐり波紋が広がっている。服用後の異常行動の報告から厚生労働省は3月、10代患者への投与を原則禁止としたが、「求められれば断れない」とする医療機関も。厚労省の安全対策調査会は25日、現行の原則禁止措置の継続を決めており、医療現場の戸惑いは続きそうだ。

 道路に急に飛び出した、高所から突然飛び降りた―。厚労省が十代への原則禁止を打ち出したのは、服用後の異常行動がこの年代に集中していたことが背景にある。

 禁止措置を受け、県内の医療機関は、十代にはタミフルに代わる治療薬リレンザを処方するなどの対応を取っているが、県南のある総合病院は「どうしても必要と患者側に求められたら断れない」と打ち明ける。

 岡山市の小児科医は「厚労省の措置はあくまで『原則』で極めてあいまい。求めに応じて投与した場合に異常行動を起こしたら、処方した医師の責任が問われかねない」と気をもむ。

 一方で、タミフルが持つ解熱作用への評価は高い。川崎医科大の尾内一信教授(小児科)は「メリットがあった患者がいることも確か。異常行動は服用によるものか、インフルエンザ自体が原因なのかを各種調査で早急に明確にすべき」と指摘する。

異常行動心配も

 子どもを持つ親の気持ちも揺れている。

 倉敷市の男性(46)は「異常行動は心配だが、中学三年の娘が来年の高校受験前にインフルエンザにかかったとしたら、効き目が知られているタミフルを使う」と話す。

 ただ、処方が十代で“線引き”されたのは、異常行動の際、大人が体力的に制止できない恐れがあることも理由とされ、この男性は「服用後は体を縛り付けて固定するくらいの覚悟が必要かもしれない」と付け加える。

 異常行動が、措置対象外の十歳未満や成人で確認されたことも不安の種だ。今月、四〇度近い高熱の息子(5つ)が受診した都窪郡の母親(25)は「九歳以下に異常行動がないとは言い切れない」と、タミフルの処方を断ったという。

4千人を突破

 厚労省はタミフルを服用しなくても異常行動が起こる可能性があるとした二つの調査グループの結果を公表。安全対策調査会も二十五日、「因果関係を示唆する結果が得られず、さらに調査を続ける」と明確な判断を先送りした。

 厚労省インフルエンザ脳症研究班長の森島恒雄岡山大大学院教授(小児科)は、患者約一万人のデータを解析したグループの報告を重視し「異常行動はインフルエンザ自体が原因ではないか」との見方を強めている。

 県内のインフルエンザ患者は今シーズン、すでに四千人を突破。過去にない早いペースで流行している。森島教授は「十代にタミフルなどの治療薬を使う場合には、高熱が続き全身状態が弱っている場合に絞るべきだろう。大切なのは、服用の有無に関係なく子どもから目を離さないこと」と強調する。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年12月28日 更新)

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