文字 

家庭や職場で「受動喫煙」考えて 県禁煙問題協の西井会長に聞く

受動喫煙の危険性などについて話す西井会長

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた受動喫煙防止の強化策として、厚生労働省と自民党側が協議を続けている健康増進法改正案。県禁煙問題協議会会長の西井研治医師(62)に、受動喫煙のリスクや対策などについて聞いた。

 ―厚労省の研究班は、受動喫煙が原因で死亡する人は国内で年間1万5千人に上ると推計している。受動喫煙のリスクは。

 喫煙者が吸う主流煙よりも、周囲に漂う副流煙の方が一酸化炭素やタール、ニコチンなどの量が多く含まれる。受動喫煙は肺がんや脳卒中、心筋梗塞などさまざまな疾患に関与し、早産や流産、低体重児の出産などの危険性を高めるといわれている。子どもの呼吸器疾患や乳幼児突然死症候群(SIDS)を引き起こす可能性も指摘されている。

 ―医療関係者らは3次喫煙(サードハンド・スモーク)の影響も心配している。

 3次喫煙は科学的な裏付けはないものの、たばこの煙に含まれる有害物質が壁紙やカーテンなどに付着することで起きるとされる。物を口に入れたりなめたりする乳幼児などは、特に注意した方がいいと訴えている。

 ―県内の受動喫煙対策の現状は。

 県が進める禁煙・完全分煙の認定施設の数は年々増えている。ただ、病院や福祉施設が中心で飲食店が少ない。飲食店は不特定多数が利用し、子どもも訪れる。全国では受動喫煙防止条例を神奈川県が2010年に、兵庫県が13年に施行している。健康増進法改正で飲食店への例外規定が盛り込まれるようなら、岡山県も独自に一歩踏み込んだ条例をつくってほしい。飲食店での完全禁煙は絶対に必要だ。公的な場所で吸えないというのが徹底されれば、やめたいけどやめられずにいる人が一歩踏み出すきっかけとなる。

 ―今後、どのような取り組みが必要か。

 法律や条例の制定はもちろん、家庭や職場の受動喫煙防止を皆が考えなければならない。子どもたちへの禁煙教育も重要で、県禁煙問題協議会も関係機関と力を入れている。たばこを吸わずに一生を過ごす「防煙」の意味もあるが、それだけではない。子どもが学校で習った内容を家族に話し、それが家庭の受動喫煙防止や両親らの禁煙の動機付けになればと考えている。喫煙者は周りに気兼ねし、吸わない人は嫌な思いをしながら我慢するという状況は社会のストレスを増やすだけ。互いに共生できる社会を目指し、一人一人が禁煙・分煙化に声を上げるべきだ。

 にしい・けんじ 県健康づくり財団厚生町クリニック所長などを経て2002年6月から同財団付属病院長。同病院と岡山大病院で禁煙外来を担当。15年4月から県内の医療関係者らでつくる県禁煙問題協議会長を務める。専門は呼吸器内科。岡山大医学部卒。岡山市出身。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年06月03日 更新)

タグ: 健康岡山大学病院

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ