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岡山県内病院が医療通訳機能強化 外国人患者対応へアプリなど導入

救急治療室で翻訳タブレット端末を操作する医師=岡山市民病院

岡山市民病院が導入した翻訳機能の付いたタブレット端末の画面。痛みの強さや性質などが細かく表示される

 日本語がうまく話せない外国人患者と意思疎通を図るため、“翻訳”機能を強化する動きが岡山県内の総合病院などで加速している。翻訳アプリの入ったタブレット端末や電話での通訳システムを導入したり、通訳者を常駐させたりして会話を支援する。県内居住の外国人が増え、医療通訳の重要性が指摘される中、一層の拡大が期待されている。

 岡山市民病院では昨年9月から、タブレット端末6台をER(救急治療室)に常備し、毎月、2、3人に使っている。どこがどういうふうに痛いのか、病名や薬の飲み方、入院生活で注意すべきことなどが中国語やスペイン語など5カ国語で入力されており、医師と患者は画面を操作しながら対話する。

 桐山秀樹救急センター長は「短く平易な内容なら違和感のないレベルで会話が進むので患者さんも安心しているようです」とメリットを強調する。

 このほか、岡山大病院、津山中央病院でもタブレット端末を取り入れている。

 倉敷中央病院、津山中央病院では今年に入り、電話での通訳システムを導入した。

 専用ダイヤルに電話をし、医師と患者は遠隔地にいる通訳者を介して会話する。予約がいらず、緊急時も対応できる。倉敷中央病院は10カ国語に対応し、ひと月に20件の利用があるという。

 語学ができるスタッフを配置する動きもある。

 津山中央病院は、がん陽子線治療への需要を見込み、国際医療支援センターを4月に開設し、中国人の医師や看護師らを配置した。川崎医科大病院は隣接する川崎医療福祉大の教授に中国語の通訳を頼んでいる。

 一方、県国際交流協会は2005年から、ボランティア通訳を養成し、患者から依頼を受けて受診時に病院に派遣している。現在、日本人と外国人合わせ約70人が登録。10カ国語に対応でき、毎年20~60件の利用があるという。

 インフォームドコンセント(十分な説明と同意)や、がんなどの告知といった複雑な内容を伴うケースでの対応に課題は残っているが、外国人の増加に伴い、通訳のニーズはさらに高まることが見込まれている。

 医療通訳に詳しい国際医療福祉大医学部の押味貴之准教授(医学英語)は「簡単なやりとりはIT機器や電話通訳で代用でき、今後さらに普及するだろう。併せて、都道府県は外国人の受診動向を調べ、ニーズに見合う通訳者の養成を図ってほしい」と話している。

 県内在住の外国人 2016年末現在、約2万4150人。10年間で13%増えた。国別では中国、韓国・朝鮮、ベトナムの順に多く、この3カ国で75%を占める。県内で宿泊した外国人観光客も15年度は前年比40%増の約16万2千人に上る。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年06月12日 更新)

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