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(3)看護師が主導する地域連携 天和会松田病院外来主任(外来化学療法室勤務) 門倉康恵

門倉康恵外来主任

 天和会松田病院(以下当院とする)は岡山県北に位置する新見市から紹介患者を多く受け入れています。新見市から当院のある倉敷市へは高速道路を使用して約1時間の距離にあります。時には緊急手術が必要になることもあり、昼夜を問わず、新見市の救急車で搬送されます。

 基本的に病院から病院への紹介は、医師が記載する診療情報提供書が中心となっています。当院は新見市のA病院と連携する中で、看護をするためには、医師の情報だけでなく、看護師同士の情報共有、連携が重要であると感じました。

 患者さんや家族の方はさまざまな不安や苦痛を抱えていらっしゃいます。診断・治療・看護すべてにおいて医療者と患者・家族には信頼関係という基盤が重要になります。紹介された新しい病院で、知らないスタッフに悩みを打ち明けることはそう簡単ではありません。だからこそ、患者さんやご家族が言えない不安に対して医療者側から介入していきたいと考えました。

 そこでA病院の看護師と協働して、患者情報シートを作成しました。このシートを活用して、情報共有に努めています。例えば、当院で化学療法(抗がん剤治療)を受けた新見在住の患者さんの具合が悪くなったときに、当院まで受診するのは大変です。そこでA病院に情報提供をしておき、診察や点滴などの処置がスムーズにしてもらえるようにしています。

 さらに当院とA病院の看護師で定期的にカンファレンスを行い、顔が見える連携を開始しました。A病院には医療ソーシャル・ワーカー(MSW)が常駐していないため、当院の社会福祉士が社会サービスや介護保険に関する情報提供をして、連携に協力してくれています。

 当院からA病院にがん化学療法の継続を依頼することもあり、その際は、がん化学療法看護認定看護師の私が電話での相談に応じ、指導しています。今では、お互いの外来看護師が治療中の経過や採血結果などを共有して、治療と看護に携わっています。お互いの顔が見えることで、連携はとてもスムーズに行えています。このように看護師が主導して行う病院連携はまだ少ないと思います。

 住み慣れた地域で患者さんや家族が安心して治療を受けるためにも、医師だけでなく、看護師や理学療法士、栄養士など多職種で行う連携が不可欠だと思います。特に市街地病院には専門医や専門看護師、認定看護師などの専門職が多くいますが、山間地域ではそのような専門職が不足しており、高度な治療を必要とする患者さんを市街地病院に紹介するに至っています。

 一方で、高齢のがん患者さんが抱える負担として通院の困難さがあげられています。高齢者にとっては公共交通機関の利用、長距離移動が身体的負担や経済的負担となっているのです。徒歩や自転車で通院できる、タクシーやバスを利用しても低コストに抑えられる地元病院での治療が高齢者の在宅医療を支えていくのではないかと考えます。

 そのためにも、患者を動かすのではなく、市街地の専門職が山間地域へ出向くようなシステムづくりが必要だと思います。私も市街地に勤務するがん化学療法看護認定看護師として、患者さんやご家族が住み慣れた地域で安心してがん治療を受けられるように、活動の場を広げていきたいと考えています。

     ◇

 天和会松田病院(086―422―3550)

 かどくら・やすえ 岡山県立倉敷中央高等学校専攻科卒、岡山県立大学保健福祉学部看護学専攻(修士課程)修了。川崎医科大学付属病院を経て2001年医療法人天和会松田病院に入職、09年より現職。がん化学療法看護認定看護師。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年07月03日 更新)

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