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小児患者家族用の宿泊室オープン 岡山大病院、寄付金を活用し整備

小児患者の家族向けに整備され、関係者にお披露目された宿泊室

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)に長期入院する小児患者の家族向け宿泊室、患者家族や見舞客が利用できる休憩所を備えたスペースが入院棟11階にオープンし3日、関係者に披露された。整備費用の一部には、心臓病で2010年に亡くなった小比賀姫那(おびか・きな)ちゃん=当時1歳、倉敷市=が生前、米国で心臓移植手術を受けるための募金活動で集まり、同大に託された寄付金を充てた。

 現地で完成披露式があり、約30人が出席。あいさつで寄付の経緯を説明した金澤右病院長は式後、予算の関係で当初計画より完成が遅れたことを踏まえ「この日を迎えることができ、ほっとしている。小児診療に力を入れるという病院の姿勢を示すことができると思う」と話した。

 東棟と西棟で構成される入院棟のうち空きスペースだった11階の約2200平方メートルに設けた。患者家族ら向けとなる東棟側にはシャワーやトイレ、ベッドを備えた宿泊室(5室で広さ各36、39平方メートル)や共用キッチンからなる「ファミーユ」のほか、休憩所「スカイラウンジ」を設置。職員向けの西棟にはスタッフ休憩室などを用意した。

 宿泊室は原則、中学生以下の患者に付き添う家族が1室2、3人で最長2週間滞在できる。1人1泊1080円。整備を長年要望してきた全国心臓病の子どもを守る会県支部の吉川綾子事務局長(74)=岡山市=は「室内の雰囲気は明るく、不安や落ち込んだ気持ちを和らげてくれると思う。利用者の声を聞きながら、より使いやすい施設にしてもらえれば」と話した。

 総工費は約2億5千万円。宿泊施設の整備費として姫那ちゃんの支援団体から約7400万円の寄付を受け、早期の着手を目指したが、フロア全体の整備のための資金繰りに期間を要した。20年に創立150周年を迎える岡山大医学部の同窓会組織などから周年記念事業の一環として資金援助もあり、16年9月に着工、今年2月に完成し、開設準備を進めていた。

 取材に姫那ちゃんの父親・裕也さん(31)は「希望通りの施設ができてよかった。施設の整備が、小児の移植医療が進む第一歩になればと願っている。支えてくれた仲間も同じ気持ちだと思う」と話した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年07月03日 更新)

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