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病中・病後の子ども預かります 医療機関、保育所 増える「病児保育」 岡山県内には16ヵ所 共働き夫婦らに好評

医師と常勤職員の看護師、保育士が連携し病気の子どもをケアする病児保育施設=倉敷市・田嶋内科

 子どもが病気になると、共働き夫婦や一人親は仕事を休むか悩む。そんな時、子どもを預かってくれる病児・病後児保育が広がっている。岡山県内で行う医療機関、保育所は十六カ所。国が制度化した十年前の三カ所から少しずつ増え、働く母親らに好評だ。

 「まだ三八度もある」。ある朝。倉敷市の女性(31)は体温計を見て顔を曇らせた。風邪をひいた二男(1つ)の熱が下がらない。普段通う保育所は三八度を超すと預かってくれない。

 母子三人暮らし。前日も看病で勤め先を休んだ。子どもは気掛かりだが、「今日は仕事に行かなければ」と悩むうち、市の広報紙で見た田嶋内科(同市児島柳田町)の「ももっ子病児保育ルーム」を思い出した。かかりつけ医ではないが、連れて行くと預かってもらえた。女性は会社に急いだ。

 「病状に変化があっても医師が近くにいるので安心」。女性は信頼を寄せる。二男はぜんそく気味で、今では四、五日続けて利用することもある。

 ももっ子病児保育ルームができたのは二〇〇三年四月。児島地区は市内四地区で唯一、病児保育がなく、市から医師会を通じ協力を要請されていた。

 インフルエンザ、おたふくかぜ、水ぼうそう…。子どもの病気は伝染病が多い。診療所四階にある病児保育ルームは、広いフロアに可動式の間仕切りがあり、病気ごとに隔離できる造り。定員八人。職員は保育士三人と看護師一人で、病児保育利用者が少ない日は入院患者の介助を手伝う。

 昨年度の利用者は延べ約千人と初年度の倍。本年度はそれを上回るペースという。田嶋憲一院長は「赤ちゃんからお年寄りまで、総合的な地域医療を目指した取り組みの一環。病児保育単独では採算が厳しいが、広い視野からみればプラス」と語る。

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 病児・病後児保育は医療機関や保育所、乳児院などが看護師や保育士を配置して行う。預けられる病状は施設で異なる。

 一九六〇年代に東京や大阪で始まり、九五年から国が自治体とともに実施施設を助成している。対象施設は二月現在、全国で四百七十七カ所。ここ五年間で三倍になった。国は二〇〇九年度、千五百カ所に増やす計画。

 岡山県内では毎年一~三カ所ずつ増え、現在は医療機関併設型が十三カ所。保育所併設型も助成対象になった二〇〇〇年度以降、三カ所できた。

 利用料は医療機関併設型が一日二千~二千五百円。保育所併設型は五百~二千円だが、対象が病気回復期の「病後児」に限られ、急性期は利用できない。低所得者には利用料の減免がある。

 対象の子どもは小学校低学年までが多い。平日だけでなく土曜日も保育を行う医療機関もある。

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 「病児保育は親の仕事と子育ての両立を支援するだけでなく、子どもも良い状況でケアを受けられるメリットがある」。一九八八年に岡山県内で最初に病児保育を始めた青木内科小児科医院(岡山市大福)の青木佳之院長は意義を強調する。

 だが、「病気の時ぐらい親が面倒をみるべき」という意識は社会に根強い。医療関係者にも病児保育の意義は十分理解されていないという。

 季節により利用者の変動が大きいのも施設側の悩み。「職員を常時確保し突発の需要に備えるためコスト高は避けられず、行政の支援が欠かせない」と、全国病児保育協議会副会長を務める青木院長。「職員研修などを通じケアの質を高めるのも今後の課題」と話している。


病児・病後児保育を行う医療機関、保育所

<岡山県>

【岡山市】青木内科小児科医院、藪内小児科医院、田中内科小児科、黒田医院、岡村一心堂病院

【倉敷市】あさき小児科医院、玉島病院、羽島こども診療所、田嶋内科

【津山市】河原内科松尾小児科クリニック

【総社市】角田医院

【玉野市】玉野市民病院

【真庭市】まつうら医院

【笠岡市】富岡保育園

【赤磐市】さくらんぼ保育園

【金光町】敬親保育園

<広島県東部>

【福山市】小池やすはら小児クリニック、橘高クリニック

【尾道市】のぞみが丘保育所

<香川県>

【高松市】トビウメ小児科医院、西岡医院、小林内科小児科医院

【善通寺市】カナン子育てプラザ21、にしかわクリニック

【牟礼町】牟礼町立東部保育所

【綾南町】綾南町病児保育室「うぐいす」

 (関係分、各県まとめ)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年07月12日 更新)

タグ: 健康福祉子供医療・話題

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