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海外発表論文で「優秀賞」 榊原病院臨床検査技師・土岐さん

患者に握力計を握る動作をしてもらいながら、心エコーを行う土岐さん(右)

通常の運動負荷心エコーでは、自転車運動をしながら検査を行う

日本心エコー図学会が選ぶ「海外学会発表優秀論文賞」を受賞した土岐さん

運動負荷心エコーの手法研究

 心臓病センター榊原病院(岡山市北区中井町)の臨床検査技師・土岐美沙子さん(32)が、日本心エコー図学会が選ぶ「2016年度海外学会発表優秀論文賞」を受賞した。

 同賞は、欧州や米国など海外で開催される国際的に権威がある循環器関連学会で、1年間に発表された心臓超音波検査(心エコー)に関する研究論文について審査している。日本心エコー図学会によると、賞創設の1999年度から2016年度までの受賞者122人のうち、医師以外の医療従事者は14人という。

 土岐さんは、16年12月にドイツで開かれた欧州心血管イメージング学会で、運動時の心臓の状態を調べる「運動負荷心エコー」の新たな検査手法の研究を英語論文にまとめ、発表した。

 運動負荷心エコーは、ベッドに寝た状態でペダルをこぐ「自転車運動」をしながら超音波検査を行うもので、心臓の動きや血液の流れなどを安静時と比べることができる。だが、高齢になると十分にペダルをこげない患者が増えるため、土岐さんは、自転車運動の代わりの指標となる簡単な運動はないか、検討を始めた。

 15年10月から約1年間、同病院の僧帽弁逆流症の患者40人(平均年齢約70歳)を対象に、自転車より負担が少ない「数分間握力計を握る」という動作でも検査を実施。心臓内で血液が逆流する様子や心拍数、血圧などのデータを安静時と比べたところ、自転車運動とは数値の上昇の仕方などが違っていたという。

 「握力計を握る動作は、自転車運動とはメカニズムが違うが、僧帽弁逆流の悪化を検出する手法となりうる」と土岐さん。今後は、今回協力してもらった患者の数年後の症状を追跡調査し、検査結果との関連を調べるなど、データを積み重ねていくという。

 同病院では、医師以外の医療スタッフにも積極的に学会参加や研究を行うよう勧めている。土岐さんは、医師の指導を受けながら、日々の臨床現場で疑問に感じたことを研究につなげているという。「臨床現場と研究の両面から、運動負荷心エコーの有効性を広く発信していきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年07月17日 更新)

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