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学びと癒やし「患者図書室」定着 岡山大病院でボランティアが支援

リニューアルオープンから10年目に入った岡山大病院の患者図書室。ボランティアが運営を支える

 岡山県内初の本格的な病院内図書室として誕生した岡山大病院(岡山市北区鹿田町)の「患者図書室」が、リニューアルオープンして10年目に入った。次第に蔵書が充実するとともにボランティアによる地道な運営が実を結び、医療の知識と癒やしを患者にもたらす場として定着している。

 現在の図書室は入院棟11階にあり、約100平方メートル。吹き抜けの斜め天井から光が差し、書棚に医学書や闘病記のほか、文庫本や実用書、絵本、漫画、雑誌など多彩な約1万5400冊が並ぶ。1人6冊まで、1冊につき最長3週間借りられる。

 漫談家・綾小路きみまろさんの本を手にした入院中の女性(52)=岡山市=は「笑える本が読みたい。病院っぽくない雰囲気で落ち着ける」。長男(5)が入院している女性(44)=福山市=は「親子とも気分転換になり、足を運ぶのが楽しみ」と話す。

 図書室は2003年10月、旧病棟1階に開設された。インフォームドコンセント(十分な説明と同意)が普及し、治療方針の自己決定が尊重される中「患者が医療を学べて癒やしにもなる場を」との狙いだった。

 06年には1階のより広いスペースに移り、開設日時も平日の3日間(午後の2時間)から5日間(午前10時~午後3時)に拡大。08年2月に現在地に移った。蔵書は03年当初1700冊だったが、大学による購入や患者、職員からの寄贈などにより、06年の移転時(約5300冊)を挟んで増え続けている。

 運営はボランティアが支える。03年の約10人から現在は60~70代を中心に約30人に増え、1日2交代で2~4人が常駐する。カウンターで貸し出しをしたり、しおりや室内の折り紙飾り、貸し出し用の布バッグを手作りしたりしている。

 カウンター係の亀山尚子さん=岡山市中区=は「本に囲まれて患者さんが喜ぶ姿が励み」と言う。ボランティアリーダーの黒崎章男さん(69)=同=は「よりきめ細かいサービスを提供できるようさらに人手が増えれば」と願っている。

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 岡山県内で開設相次ぐ

 県内では岡山大以外の病院でも図書室が相次いで開設され、患者の学びの場が広がっている。

 倉敷中央病院(倉敷市)は2003年1月、外来棟に図書室を開設し、医療・介護関連などの2500冊を備える。12年9月には入院棟でも運営をスタート。美術や随筆、病院創設者の実業家・大原孫三郎にまつわる書籍など770冊を置く。

 川崎医科大付属病院(倉敷市)は10年9月に外来にオープン。医学や病気に関する書籍や絵本など約550冊がある。「医師の説明を受ける前に予備知識を得るなど活用する患者さんが増えている」と同病院。

 昨年12月の開院に合わせて図書室を設置したのは、川崎医科大総合医療センター(岡山市)。医療関連や介護体験記など約200冊の中から閲覧できる。常駐する看護師がその場で応じたり、他の専門職につないだりしながら「治療を巡る患者らの相談窓口の役目も果たしている」(同センター)という。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年07月23日 更新)

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