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やぶ医者大賞に鏡野の澤田さん 口腔ケア、啓発活動を評価

治療後に患者と談笑する澤田所長

 地域のために奮闘する“やぶ医者”が岡山県鏡野町にいる―。地域医療の発展に貢献した医師をたたえる「第4回やぶ医者大賞」に、県内から初めて鏡野町国保上斎原歯科診療所の澤田弘一所長(50)=同町=が選ばれた。診療や検診にとどまらず、口腔(こうくう)ケアを中心とする予防、啓発活動が評価された。5日に兵庫県養父(やぶ)市で表彰式がある。

 澤田さんは神戸市出身で、岡山大歯学部などを経て1998年から同診療所に勤務。前任の病院で、歯が悪くなったら治療を繰り返すという毎日に「歯を治しても人を治せていない」と予防、啓発を意識するようになり、診療所で実践した。

 着任当初、事業所に出向いて歯磨きを指導したりしたが反応は鈍く、一方的に教えるのではなく、住民の声に耳を傾けるよう努めたという。小学校で保護者らと情報交換しながら昼休みの歯磨きを取り入れ、予防啓発の劇や紙芝居を作った。

 その結果、上斎原地区の子どもの虫歯や歯肉炎の要治療率は、99年の78%から2005年は18%と大きく改善し、現在はほぼゼロとなっている。

 住民と触れ合う中で、口内の不健康は誤嚥(ごえん)性肺炎や糖尿病にもつながる恐れがあるのに認識が低く、対応が後手に回っている現状も気になったという。着任後に取得したケアマネジャーの資格を生かし、歯科衛生士らと積極的に連携。介護福祉施設を定期的に訪問し、適切な食事法や口腔機能を回復させるリハビリ法について職員や家族に助言した。

 上斎原地区に赴いて間もなく20年となる澤田さんは「今は地域の皆と一緒にまちづくりをしている実感がある」と充実感をにじませる。週1回は大学や総合病院に通って新しい知識を追い求めており「これからも得た知見を地域に還元できる医師でありたい」と、受賞を機に決意を新たにしている。

 やぶ医者大賞 「やぶ医者」の語源が「養父にいた名医」だったとの説があり、養父市がへき地で活躍する医師にスポットを当てることで、医師確保につなげようと2014年に創設した。毎年2人が大賞に選ばれており、澤田さんは鏡野町の推薦を受け、全国4人の中から選ばれた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年08月02日 更新)

タグ: 医療・話題

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