文字 

岡山大病院・総合診療棟西棟 本格運用始まる

超高精細のマルチスライスCTシステム。1階の放射線部で運用している

6階に整備された治験病床。さまざまな疾患を持つ患者に応じた薬を投与したり、新薬の効果・副作用を検証する臨床試験を実施する

伊達勲副病院長

 岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)が先端医療研究の中核施設として整備していた総合診療棟・西棟の本格運用が始まった。創薬や医療機器開発を目的に新医療研究開発センターなどを配置し、高度な臨床研究や治験を推進。診療の中核となる総合診療棟・東棟と併せ、病院の“心臓”としての機能を発揮する。

東棟と“病院の心臓”機能発揮

 入院棟北側にあり、鉄筋コンクリート7階地下1階延べ1万3237平方メートル。新医療研究開発センターは、患者の血液や組織など生体試料を保管・管理して医学研究に活用するバイオバンク、新薬の効果や副作用を検証する治験病床とともに6階に配置した。このほか、超高精細のマルチスライスCTを導入。内視鏡総合検査システムやデジタルエックス線画像診断システムなども整備した。災害時には本部機能を担う災害対策室も設けている。2014年6月に着工し、今年5月から本格運用が始まった。事業費は約52億円。

 5月に西棟内で行われた竣工(しゅんこう)式では、金澤右(すすむ)病院長が「総合診療棟東棟・西棟は、今後、岡山大学病院の新たな“心臓”に当たる施設として機能させ、高度先進医療や医学研究・臨床研究を支える場とし、わが国の医療の発展に尽くしたいと考えています」と述べた。

 13年から稼働している東棟は、鉄筋コンクリート5階で延べ1万1837平方メートル。1階にはIVRセンター(インターベンショナル・ラジオロジーセンター)を整備。がんや心臓、血管などの病気を画像に映しだし、細いカテーテルなどで低侵襲の治療を行う。3、4階にはハイブリッド手術室など最新設備を備えた20の手術室を配置している。

 岡山大病院は17年3月、厚生労働省から中四国地方唯一の「医療法上の臨床研究中核病院」としての認定を受けた。日本発の医薬品・医療機器などの開発に向け、臨床研究などの中心的な役割を担う病院と位置付けられている。

伊達勲副病院長にインタビュー
研究面での高度先進施設


 岡山大学病院総合診療棟の機能と特徴について、伊達勲副病院長(脳神経外科学)に聞いた。

 ―まずは東棟について説明してください。

 高度先進医療を行うにふさわしい最新設備を備えた20の手術室、低侵襲治療を実施するIVRセンターなどを設置しています。

 手術室はモニター類が極めて充実しています。ハイビジョンの画像は鮮明で、術者以外のスタッフとも十分な情報共有ができます。4階にあるハイブリッド手術室は血管造影装置を併設し、血管の中を通して行うカテーテル治療と手術が同時に行えます。臓器移植に対応できる広い手術室も4室あります。年間の手術件数は運用前が約8500件でしたが、今では1万件を超え、全国の国立大学病院の中ではトップクラスにあります。

 画像ガイド下にカテーテルなどを用いてがんや心臓病・脳卒中などの低侵襲治療を行うIVRセンターでは、CTやMRIなどで体内の病変を確認しながら治療します。患者さんの体への負担が少なく、高い治療効果が期待されます。

 ―岡山大学病院は入院日数が短いのも特長ですね。

 岡山大学病院は、手術前後の周術期を管理する「周術期管理センター」を全国の病院に先駆け、2008年に発足させました。外科医や麻酔科医といった手術に関わる医師以外に、看護師や臨床工学士、薬剤師、歯科医ら多職種の医療スタッフが情報を共有しながら手術のリスクを軽減し、術後の痛みを緩和して早期の離床を支援します。このため在院日数は平均11・8日で、こちらも全国の国立大学病院でトップクラスとなっています。

 ―西棟はいかがでしょうか。

 東棟ほど派手さはありませんが、研究面での高度先進施設というイメージです。6階にはバイオバンク、治験病床、創薬や医療機器の開発を目指す新医療研究開発センターを集約しました。

 バイオバンクは、患者さんから提供された血液や組織などの生体試料を保管・管理して、さまざまな病気の原因遺伝子を特定したり、患者さんの家族に同じ病気が発症する可能性があるかどうかなど、種々の医学研究に取り組みます。

 6床ある治験病床では、新薬の効果や副作用を検証するための臨床試験を行います。一般の患者さんが入院する病棟から離れていますし、プライバシーに配慮した個室になっています。医師、看護師はいろんな意味でやりやすいでしょう。

 新医療研究開発センターは、再生医療などの研究に取り組みます。例えば、外傷を受けた脳に細胞を移植して機能改善を図ることなどを計画しています。重い心臓病などについても、岡山大病院では既に再生治療を手がけています。

 ―4階には災害対策室を設けていますね。

 災害発生時には、病院全体の対策本部の機能を果たします。4階のフロア全体を災害対策センターとし、被災者救助に当たります。食料備蓄も職員と患者さんの分を含めて3日分を病院内に備えています。

 ―岡山大学病院は今年3月、中四国地区で初めてとなる医療法上の臨床研究中核病院に指定されました。

 岡山大学には、中四国地区と兵庫県西部の関連病院で組織するネットワーク「中央西日本臨床研究コンソーシアム」があり、全部合わせると3万床のベッド群になります。そのスケールメリットを生かし、いわゆるビッグデータを分析して医学の進歩に貢献しようと考えています。そのため新医療研究開発センターには分析や統計に強い医師や専門家を多く集めています。

 岡山大学病院は総合診療棟で展開される高度な医療と臨床研究を両輪に、今後も中四国地区の医療をリードしていきます。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年08月07日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ