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「がん幹細胞」分化し増殖促す 岡山大院教授ら仕組み突き止める

妹尾昌治教授

 がんのもとになる「がん幹細胞」が分化し、がん細胞を取り巻く組織の一部になって増殖を促していることを、岡山大大学院自然科学研究科の妹尾昌治教授(生物工学)らのグループが、独自に編み出したマウスの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いる実験で突き止めた。がん増殖の仕組みの一端が明らかになり、新しい治療法の開発につながる可能性がある。英電子科学誌サイエンティフィック・リポーツで7月末に発表した。

 がん組織はがん細胞と、それを取り巻く「間質組織」からなる。間質組織は「がん微小環境」とも呼ばれ、がん細胞が“すみやすい”環境を形成している。近年、がん微小環境が、がん細胞の増殖などに関わっていることが分かり、間質組織に焦点を当てた研究が進んでいる。

 グループはこの間質組織のうち、がん増殖に最も重要とされる「線維芽細胞」に着目。これまで不明だった同細胞が作られる詳細な経緯を実験で明らかにした。

 実験では、ヒトの乳がん細胞を培養した液体の上澄みで、マウスのiPS細胞を培養してがん幹細胞を作り、マウスの皮下に注射。がん組織となったところで体内から取り出して培養し、蛍光顕微鏡で観察した。すると、がん幹細胞以外の細胞が見つかった。この細胞は線維芽細胞の特徴を備えていたことから、がん幹細胞が線維芽細胞を作り出していると判断した。

 妹尾教授は「がん細胞そのものに加え、間質組織をターゲットにした新しい治療も有効だろう。がん幹細胞が増殖、分化するメカニズムの解明にも取り組みたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年08月08日 更新)

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