文字 
  • ホーム
  • がん
  • 胃がん、食道がんは低侵襲手術 検診で早期発見を

胃がん、食道がんは低侵襲手術 検診で早期発見を

消化器外科部長
藤原 由規
1985年、兵庫医科大卒。日本外科学会外科専門医・指導医、日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医、日本食道学会食道科認定医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医、日本食道学会食道外科専門医。

 川崎医科大附属病院(倉敷市松島)の消化器外科の藤原由規部長(同大教授)に、胃がんと食道がんの一般的な治療や早期発見の意義について聞いた。

―胃がん治療のガイドラインを。

 胃がんは進行度を示す病期「ステージⅠ~Ⅳ」まであり、ステージⅠは低侵襲手術(腹腔鏡下手術)と内視鏡的粘膜切除を行う。進行がんのステージⅡ、Ⅲは手術後に「ティーエスワン(TS―1)」という抗がん剤を1年間服用するのが標準的治療だ。手術は開腹の胃切除で、腹腔鏡手術については現在、臨床試験中。術後にTS―1を1年間服用することで、3年ないしは5年生存率が延長するデータがあり、これが胃がん診療治療ガイドラインに記載されている。しかし、TS―1を1年間服用できる人は約65%で非常にコンプライアンスが低い。前任の近畿大学で手術したステージⅡ、Ⅲの患者を解析すると、1~2カ月の体重減少が10%を超える人はTS―1が十分に服用できない。術後に体重減少を最小限に抑えること、すなわち栄養学部のサポートなしにはできない。体重減少を抑えるためのプロトコル(原案)を作成している。

―どんな時に気づくのか、兆候は?

 全国的に胃がんの6割が早期がん。その3割が内視鏡で治療している。進行がん4割、早期がん6割のうち、3割が腹腔鏡など低侵襲手術が行われている。検診で発見されるケースもあるが、吐き気、胃痛、嘔吐などの自覚症状も多い。ピロリ菌が胃がんの原因の約8割と、WHOの勧告で分かっている。ピロリ菌プラスと言われた人は検診を受けてもらえたら、早期に見つかり、助かる確率が上がる。

―食道がん治療のガイドラインを。

 食道がんは悪性が高く、胃がんに比べたら罹患率が少ない。アルコールとの関連性がいわれており、アルコールとたばこが重なると、がんになりやすくなるというデータがある。そういう人を中心にスクリーニングをすることで早く見つけて内視鏡的治療を行うという体制に傾きつつある。しかし、進行がんで見つかるケースは7割。経過的切除が必要と考える。昔は、内視鏡的切除はチューブのようなものを使ってやっていた。今は、内視鏡下で針金みたいなものを使い、粘膜下を剥離する形(ESD、内視鏡下粘膜下層剥離術)。ステージⅡ、Ⅲ、あるいは粘膜下層、内視鏡的切除の適用外のがんが少し深く入ったものは術前治療なしにそのまま手術をする。また、ステージⅡ、Ⅲのがんは術前に化学療法ないし、放射線療法を加えないと、生存率が伸びないという報告がある。症例に応じて今後当院では、ステージⅡ、Ⅲに対して術前に補助療法をやっていく考えだ。

―自覚症状は?

 7、8割が、胸に痛み、食事がつまる、食べ物を吐くといった自覚症状で来院する。自覚症状が出でからでは遅い。早期で見つけるのが一番。アルコールを若い時からよく飲んでいる人や、日本人の約40%という、お酒を飲んだら顔が赤くなる「フラッシャー」といわれる人は危険。内視鏡検査を受けたほうがよい。

―男女の差は?

 男性が多い。一昔前は男女比は10:1だったが、今は6:1。日本人は扁平上皮がんが多く、このがんはお酒とたばこが関与する。女性の患者が増えたのは、お酒とたばこをたしなむ人が増えたせいだと思われる。お酒に飲んでいるのではなく、お酒に飲まれている印象だ。がんになった人の8、9割がそうだ。

―検診を受ける適性年齢と検査方法は?

 食道がんは50歳もしくは55歳以上。飲酒で顔が赤くなるフラッシャー、家族・親族が食道がんで亡くなっている人などは要注意だ。バリウム検査では分からないので、内視鏡検査を受ける必要がある。消化器内科、消化器外科のある専門施設で受けたほうがよい。専門施設は設備が整っており、NBI画像など特殊な内視鏡を用いることで発見しやすくなる。食道がんの手術は難しく、できるだけ早く見つけるのが大切だ。

―治療は?

 食道がんの手術は低侵襲手術、全国的に胸腔鏡手術が増えているが、臨床試験中というのが現状。食道がん手術の症例を全国の大学で登録するするシステムがある。胸腔鏡手術は再施術率が高いので慎重に扱わないといけない。しかし、時代は低侵襲手術。当院に着任してから1例しかないが、胸もお腹、首の3カ所を切開するが、できるだけ小さい傷で済むように手術を行った。低侵襲手術は、胸壁破壊、腹壁破壊が少ないだけというデータもあるが、美容的、コスメティックにはよい。進行がんでも10センチも開けば手術は可能。今後、当院では大きな開胸の手術はやめ、小さい傷でできるだけ患者さんの負担を減らす方向で検討している。

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年08月18日 更新)

ページトップへ

ページトップへ