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(2)小児白血病 倉敷中央病院小児科副医長 納富誠司郎

納富誠司郎小児科副医長

 今回は小児がんで最も多く、約3万人に1人が発症する小児白血病についてお話しします。

どのような病気ですか?

 私たちの体の中を流れる血は、骨の中にある骨髄(こつずい)という場所で主に作られます。骨髄の中に造血幹細胞という血の元となる細胞が存在していて、それが徐々に成熟して最終的には白血球、赤血球、血小板という血の成分になります。これらをすべて造血細胞と呼びます。

 白血病は、骨髄の中の造血細胞に偶然、遺伝子異常が起きてしまい、成熟できない細胞が無秩序に増殖してしまう病気です。この状態をがん化といい、がん化した細胞を芽球(白血病細胞)と呼んでいます。

どのようにして見つかることが多いのですか?

 発熱や全身倦怠(けんたい)感が治りにくい時に行った血液検査で、異常が偶然見つかることが多いです。正常造血細胞の減少により顔色不良や鼻出血、歯肉出血、あざが生じやすいことも特徴です。リンパ節や肝臓、脾臓(ひぞう)、睾丸(こうがん)が大きくなり、足や腰の骨痛が生じることもあります。白血病の種類によっては皮膚にできものを作ることもあります。

診断はどのようにするのですか?

 おしりの上にある腸骨という骨に針を刺し、骨髄の中の造血細胞を検査する骨髄穿刺(せんし)が必要です。また、病気の広がりを見るためにエックス線撮影、超音波、CT、MRI、髄液検査なども行います。

治療はどのようにするのですか?

 (1)急性リンパ性白血病(小児白血病の70%) 年齢、診断時の白血球数などから治療内容が決定されます。標準的な治療法は抗がん剤を使った化学療法です。複数の抗がん剤の点滴と飲み薬を併用した化学療法を約10カ月間にわたって入院して行います。この治療によって、多くの場合は体内から白血病が検出できない寛解(かんかい)という状態に至ります。さらに、再発予防のために外来での治療が必要で、約1年4カ月は内服の抗がん剤を続け、合計2年間の治療を終えます。

 (2)急性骨髄性白血病(小児白血病の25%) 抗がん剤を使った化学療法が中心で約6~8カ月の入院治療を行います。

 (3)一般的な化学療法で治癒が見込めない場合にのみ、他人の造血幹細胞を移植する治療(骨髄移植や臍帯血(さいたいけつ)移植)を行うことがあります。

     ◇

 子どもの白血病は現在、約9割の患者さんが治癒する時代です。苦痛を伴う検査や治療は鎮痛薬や鎮静薬で眠った状態で行いますが、それでもなお長期入院が必要な治療に対して、家族とともにお子さん自身が立ち向かわなければなりません。さらに、退院後も学校に通いながら治療を続け、5年間の寛解を続けることで、初めて完治したといえる日が訪れます。

 そのためには、お子さんの教育や発達・発育・心理にも配慮することが不可欠です。当院は院内学級や保育だけでなく、臨床心理士も小児病棟に配置し、多様な面でサポートしながら治療を行っていきます。こうして、患者さん、家族、医療スタッフみんなで小児がんを乗り越える体験が、患者さんの未来につながっていくと信じています。

 次回は小児外科医が深く関わる小児固形腫瘍について知っていただこうと思います。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 のうどみ・せいしろう 関西大学第一高校、奈良県立医科大学卒。医学博士(京都大学大学院)。武田総合病院、京都大学医学部付属病院、島根県立中央病院などを経て2017年4月より現職。日本小児科学会専門医・指導医、日本血液学会専門医、日本小児血液・がん学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年09月04日 更新)

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