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新タンパク質発見 インスリン作用高め血糖値低下 岡山大グループ 糖尿病予防に期待

発見された肥満に伴う血糖値を下げるタンパク質。網状に見える部分が「バスピン」で黒部分が脂肪(岡山大提供)

和田淳講師

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の和田淳講師(腎・免疫・内分泌代謝内科学)らのグループが、血糖値を下げる働きを持つ新しいタンパク質を、肥満ラットの内臓脂肪から発見した。インスリンの働きを強める機能を持つと考えられ、糖尿病予防や新たな治療薬開発につながる成果として期待される。十八日付米科学アカデミー紀要(電子版)に発表した。

 和田講師らは、遺伝的に肥満しやすいラットと普通のラットから内臓脂肪を取り出し、組織を遺伝子レベルで比較。肥満ラットにだけ、これまで知られていなかったタンパク質があるのを発見し、バスピン(vaspin)と名付けた。脂肪以外の臓器や皮下脂肪にはほとんどなかった。

 バスピンの体内での働きを確かめるため、肥満マウスと通常マウスにバスピンとブドウ糖を注射し、血糖値の上昇幅を調べたところ、通常マウスでは血糖値が下がらなかったのに、肥満マウスはインスリン分泌量は変わらず血糖値が二~三割下がった。

 血糖値を下げるには多量のインスリンが分泌されるが、バスピンは肥満マウスにあるインスリンを効きにくくする酵素の働きを抑制し、血糖値を下げるとみられている。

 和田講師は「肥満などが原因でインスリン作用が鈍感になって血糖値が上昇する糖尿病に有効と考えられる」としている。また、内臓脂肪が原因で心筋梗塞(こうそく)などを引き起こす「メタボリックシンドローム」にもバスピンが関係しているとみており、「人体での働きを調べ、メカニズム解明につなげたい」と話している。


肥満治療に応用も

 堀田紀久子理化学研究所・肥満関連遺伝子研究チームリーダー(内分泌代謝学)の話 肥満治療法への応用につながる画期的な発見。メタボリックシンドロームの原因究明にもつながるだろう。


ズーム

 メタボリックシンドローム それぞれは異常と診断される数値に至らなくても、内臓肥満や高血圧、高脂血症、血糖高値などいくつかの要因が複合し、動脈硬化や糖尿病を引き起こす状態。最終的に脳梗塞や心筋梗塞の発症につながる。腹部に脂肪がたまる「内臟脂肪」が原因とされ、40代以上の日本人男性の5人に1人にみられる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年07月19日 更新)

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