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日本原病院が嚥下食レシピでGP 全国コンで県産果物のケーキ出品

グランプリを獲得した嚥下食のケーキ

レシピを考案した中田さん(左)と末田さん

 かんだり、のみ込んだりするのが難しい人も食べやすい「嚥下(えんげ)食」のレシピを競う全国メニューコンテスト(日本医療セントラルキッチン協会など主催)で、日本原病院(津山市日本原)がグランプリを獲得した。岡山県特産のフルーツをふんだんに使ったケーキで、がんの終末期の女性が「食べたい」と漏らした願いを形にして最優秀に輝いた。

 大会は一般料理、デザート、行事食の3部門に全国から計114点が寄せられた。日本原病院はデザート部門に応募。「フルーツがたくさん入ったケーキを食べたい」という入院女性の思いをもとに、同病院栄養課の調理師中田富美さん(53)と調理師末田佳奈子さん(29)が、管理栄養士佐藤洋子さん(45)のアドバイスも受けながら開発を進めた。

 女性は完成前に亡くなったが、中田さんと末田さんは思いを受け止めて試行錯誤を重ねた。ケーキには県産の清水白桃やシャインマスカットを使用。それぞれゼリーにしてケーキの生地に載せ、桃のムースで覆った。生クリームと果物ゼリーで仕上げた花(桃)、葉(マスカット)、リボン(レモン)の飾り付けで華やかさを演出した。

 書類審査で部門の上位2点に選ばれ、決勝進出が決まった後も2人は工夫を続けた。ゼリーとムースの食感がより均一になるように1グラム単位でゼラチンの量を調整したり、食感を滑らかにするため生地をスポンジからビスケットに変更し、ゼリー状に固める材料を変えたりと改良を加えた。

 13日に東京の東京国際展示場で開かれた決勝審査では各部門2点の計6点を審査員のイタリアンシェフ、言語聴覚士らが審査。日本原病院は中田さんが解説する中、末田さんが調理を実演。料理の見た目や栄養に加え、食べやすさが認められ、高評価を得たという。

 2人は「患者さんのために作った品が評価され、うれしい。介護現場でもっと嚥下食が広まってほしい」と話す。

 日本原病院は2008年から嚥下食の試作を始め、10年秋から全てのメニューで提供している。コンテストには15年に初参加し、ホルモンうどんで、準グランプリに次ぐ優秀賞を獲得した。

 嚥下食 老化や病気などが原因で摂食・嚥下障害のある人が食べやすいように、ペースト状にした食材をゼラチンなどで固めたり、液体にとろみをつけたりした料理。通常の料理に近く、食欲などQOL(生活の質)の低下を防ぎ、栄養改善や誤嚥事故の防止に効果があるという。摂食・嚥下障害のある人は、療養病床の入院患者や特別養護老人ホーム、老人保健施設の入所者では4割以上という統計もある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年09月23日 更新)

タグ: 介護高齢者医療・話題

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