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(4)サイバーナイフって、何? 岡山旭東病院脳神経外科主任医長・サイバーナイフセンター長 津野和幸

岡山旭東病院が来春に導入を予定している最新のサイバーナイフ治療装置

サイバーナイフによる治療で消失を認めた脳動静脈奇形の症例と、著明な腫瘍縮小効果を認めた下垂体腺腫の症例

津野和幸脳神経外科主任医長・サイバーナイフセンター長

 皆さんは「サイバーナイフ」をご存じでしょうか? サイバーナイフは定位放射線治療装置の一つで、頭蓋内疾患(脳動静脈奇形、良性・悪性脳腫瘍)、頭頸部(けいぶ)病変(頭頸部がん)を中心とした症例の治療を行い、最近では体幹部病変(肺がん、肝臓がん、前立腺がん)の治療も認可された高精度放射線治療装置です。

 岡山旭東病院では2000年7月より、日本で3番目、世界では8番目にこのサイバーナイフシステムの稼働を開始し、頭蓋内・頭頸部病変を中心に既に延べ4500例近く、全国トップクラスの治療症例数になっています。来春には、最新のシステム(M6)へバージョンアップを行い、治療時間の短縮(線量率の上昇)、治療領域の拡大(頭蓋内・頭頸部病変中心の治療だけでなく、体幹部病変の治療も導入)を見込んでいます。

 サイバーナイフのほかにも、定位放射線治療が可能な装置として、ガンマナイフ、トモテラピー、ノバリス、トゥルービーム、シナジー、ベロなどが開発され、岡山県下にも導入されています。基本的には患者さんを固定し、細いエックス線(またはガンマ線)をさまざまな方向からコンピューター制御で正確に照射します。放射線は病巣に集中させ、周辺の正常組織にはごくわずかの線量に抑えます。病巣には治療効果が得られる十分な線量が照射できるようになっています。

 サイバーナイフが優れている点として、(1)非侵襲性(傷つけることのないマスクと吸引式枕・固定具での固定)(2)正確な位置確認(治療中も患者さんの位置を確認しています)(3)時間的自由度(1回の照射で治療を完結するだけではなく、周辺の正常組織により優しい治療が必要であれば3~5回、場合によっては10回に分割して治療が可能)(4)空間的自由度(頭蓋内病変のみならず頭頸部病変、体幹部病変も治療可能)―が挙げられます。

 当院では、現在年間220~300症例の治療を行っており、15年9月に4千症例に到達しました。これまでの症例では、頭蓋内病変が92・5%、頭頸部(頭蓋外)病変が7%、体幹部病変が0・5%と、頭蓋内・頭頸部病変中心の治療を行ってきました。

 頭蓋内病変の内訳をみると、転移性脳腫瘍(各種がんが脳内に転移した状態)が68%、髄膜腫が8%、神経膠腫(こうしゅ)(グリオーマ)が6%、聴神経鞘腫(しょうしゅ)4%、脳動静脈奇形4%―などでした。転移性脳腫瘍の原疾患は、肺がん64%、乳がん12%、結腸がん9%―などとなっています。

 来春、最新のサイバーナイフシステム導入により、肺がん、肝臓がん、前立腺がんなどの体幹部病変で、定位放射線治療を希望される多くの患者さんの治療が可能となります。他の施設と協力し、体幹部病変への治療準備を進めていく予定です。

 当院でのサイバーナイフ診療・治療は紹介予約制となっていますので、受診を希望される方はかかりつけの医療機関や主治医の先生にご相談ください。

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 岡山旭東病院(086―276―3231)

 つの・かずゆき 岡山大学医学部卒。国立岩国病院(現岩国医療センター)、岡山済生会病院、赤穂中央病院、三原興生総合病院勤務を経て、2006年より岡山旭東病院勤務。脳神経外科診療・サイバーナイフ治療を兼任。脳神経外科専門医、がん治療認定医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年10月16日 更新)

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